脱「100m先も車移動」 地方の課題を解決する「モビリティハブ」とは【牧村和彦博士の移動×都市のDX最前線#3】
ちょっとしたお出かけの機会と場をエコで提供

海外の動きはとにかく速い。500mや1kmといったちょっとしたお出かけに対して、マイカーに代わるエコで小さなスローモビリティの提供支援や自動車を保有しない人への自立的な移動の支援を行っている。
新型コロナ禍で影響を受けた低所得者への移動支援、公共交通のファーストマイル・ライスマイルの支援など、その目的は様々であるものの、グリーンリカバリー(コロナ禍の景気回復で環境に配慮した施策)をけん引し、人々の社会生活への復帰、移動需要の回復を促すために、モビリティハブが続々と登場している。
モビリティハブの本質とは、多様な移動手段の「場」と「機会」を提供する取り組みであり、自立的な移動を促すものだ。場を通して多種多様な価値観が混ざり合い、人々の社会参加を促しつつ、気候危機への対応を緩やかに進めていくことにある。
MaaSやDXが比較的バーチャルな世界観である中で、バーチャルとリアルな空間をつなぐデジタルツイン時代に必須の機能としても注目だ。
モビリティハブには、カーシェアリングや自転車シェアリング、電動キックボードのシェアリングなどの共有による小さなスローモビリティ・サービスが配備される。これらは近年、電動化されコネクティッドな移動体であり、日々進化している。宅配ボックスや充電スタンドなどのサービスも付帯する施設も登場している。
立地場所は、駅やバス停の直近だけではなく、交通が不便な住宅地、商業施設、再開発地区、道の駅、観光地などの駐車場、コンビニなど様々な場所への導入が始まっている。また、ガソリンスタンドや自動車ディーラー、駐車場、公園の機能更新としても注目だ。
モビリティハブは都市の装置として、様々な形態に応用可能であることから、日々その機能や役割が進化している点も見逃せない。車両自体も進化していくことから、市民が最新の技術を体験する機会が増し、新しい技術、エコでスローな移動手段の理解が深まっていく効果も期待できる。
人々の交流の場と移動のクロスポイントを創造し、街の軒先、グランドレベルの小さな装置としても期待したい。