東京駅の丸の内駅前広場に、昭和中期まで「ガソリンスタンド」があった!
東京駅丸の内駅前広場は、今では整然とした美しい広場だが、実は意外な過去があった。かつて、この広場の一番目立つ場所にガソリンスタンドがあったのだ。
鉄道拡張と利潤の対立
しかし、戦後の復興が進むと同時に、ガソリンスタンドが開発の妨げになり始めた。きっかけは、国鉄が通勤輸送力増強の第3次計画として、総武線と東海道線の線路増強を決定したことだった。
その一環として、国鉄は東京駅地下に新しいホームを建設することを計画していた。そこで、当初の契約どおり1964(昭和39)年3月に契約を打ち切ることを事業者に通告した。
しかし、彼らはこれに応じなかった。なぜなら、ガソリンスタンドが莫大(ばくだい)な利益を上げていたからだ。前述の『朝日新聞』はこう書いている。
「ここのガソリンの売上げ念にざっと1億8000万円。利益は3000万円以上。国鉄に払う用地使用料は372万円だからうま味がある。これだけのスタンドをつぶすには、同じくらいの成績があげられる代替地を提供してくれと会社側は主張した」
そこで国鉄は千代田区などに代替地を提案したが交渉は決裂し、1967年3月、国鉄は東京地裁に用地明け渡しの仮処分を申請した。
事業者はこれに異議を唱えたが、1968年6月、東京地裁は国鉄の申請を受理し、敷地の取り壊しを決定した。事業者は東京高等裁判所に抗告したが認められず、同年7月までに自主的に建物を撤去し、敷地を明け渡すことになった。
このように、戦後焼け野原となった東京では
「どうせ空き地だから」
と行政や公的機関が安易に土地を貸し出し、後に問題となるケースが少なくない。