数減らす列車の「動力集中方式」 世界的に「分散式」へなぜ変化? なおも集中式貫く国も

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日本の電車や気動車で主流の「動力分散方式」が世界で広がっている。機関車牽引の「動力集中方式」のデメリットが顕在化してきたためだ。しかし、そう劇的に広がるわけでもない。それには数の問題のほか、その国ならではの事情を抱えるケースもある。

分散方式のメリット わかっちゃいるけども

ドイツの初代高速列車ICE1は、機関車製造の技術を生かした動力集中方式を採用したが、いまは分散方式となっている(橋爪智之撮影)。
ドイツの初代高速列車ICE1は、機関車製造の技術を生かした動力集中方式を採用したが、いまは分散方式となっている(橋爪智之撮影)。

 動力分散方式が優位な点として、まず動力を効率よく使えることが挙げられる。動力集中方式の場合、動力は先頭の機関車1両に集中し、車輪の粘着力を考えても加速性能の向上には限界がある。しかし編成に数か所の駆動軸がある動力分散方式は、加速性能を飛躍的に高めることが可能だ。

 また機関車牽引列車で避けて通れない、終着駅における機関車の付け替えも、両端に運転台がある電車や気動車であれば不要になる。これらはもちろん、日本で動力分散方式が発達してきた理由そのものである。

 とはいえ、今のヨーロッパを見てみると、まだ機関車牽引の旅客列車は多い。それはいくつかの事情が絡み合ってのことだ。

 まず、置き換えると言っても規模が大きすぎて、全てを一気に変えることができないことだ。各国とも全国規模で数千、数万という数の車両が運行されていて、そのほとんどが客車であったとすれば、それらを新型の電車や気動車で一気に置き換えることは現実的とは言えない。日本とて、昭和の頃から徐々に置き換えが進められ、ようやく置き換えが完了したことを考えれば、その出だしが遅かったヨーロッパは、まだまだ客車列車が主流のところが多いのだ。

 今残っている客車列車については、客車に運転台を取り付け、双方向へ運転可能なプッシュプル運転に対応した車両が多く、運用上は電車や気動車と同じような運転が可能となっている。

 高速列車は、フランスのTGVやドイツのICE、イタリアのフレッチャロッサなど、いずれも初期に開発された車両は前後に機関車を配置する動力集中方式だったが、TGVを除いて動力分散方式へと進化した。TGVが今も動力集中方式にこだわり続ける理由は、フランス国内の需要とインフラに起因するものだ。

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