生鮮食品を“最速29分”でお届け 中国EC「ディンドンマイツァイ」、利益確保の舞台裏とは?【連載】方法としてのアジアンモビリティ(11)

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急速に変化・成長する経済圏として、世界的に注目されているアジア。この地域発のモビリティ・アプローチが、今後の経済において重要な役割を果たすことはいうまでもない。本連載では、アジアにおけるモビリティに焦点を当て、その隆盛に迫る。

異色経歴の創業者

ディンドンマイツァイのサービス(画像:ディンドンマイツァイ)
ディンドンマイツァイのサービス(画像:ディンドンマイツァイ)

 中国の生鮮食品EC市場が急速に拡大したのは、新型コロナがきっかけだった。2019年に1620億元だった市場規模は、2020年に63%増となる

「2638億元」

に拡大している。こうしたなかで、ディンドンは「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」や、米国の有力ベンチャーキャピタル「セコイア・キャピタル」などから資金調達し、2021年6月には米国で新規株式公開(IPO)を行い、約9569万ドルを調達している。

 そんなディンドンを率いているのが、異色の経歴を持つ創業者の梁昌霖だ。梁は1972年に安徽省小県城の農村家庭に生まれ、国防科学技術大学卒業後、12年間従軍した。

 30歳の時の2002年に退役した梁は、上海に出て事業を始めた。梁を支えていたのが、大学や部隊で培ってきたIT技術だった。動画技術がそれほど発展していない時代に、彼は独自の動画編集アプリを開発し、ウェブサービスを開始していたのだ。

 2014年にはディンドンの前身となる生活関連アプリ事業を立ち上げた。やがて彼は、

「大都市ではサラリーマンが野菜を買う時間が不足しており、高齢者にとっては野菜を買いに出掛けることが負担になっている」

と確信、2017年にディンドンを設立したのだ。

 梁は、新型コロナ感染が拡大した2020年、中核社員に上海残留を呼び掛け、

・安全
・補給
・物流

の三つのチームを設置し、上海市民への野菜の供給確保と価格の安定を最優先してサービスを提供したという。こうした貢献が評価され、梁は「2020年全国退役軍人起業家栄誉者」を与えられている。

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