「武蔵小杉」「武蔵浦和」「武蔵小金井」 なぜ“武蔵”のつく駅名は21個もあるのか?
関東地方には「武蔵」の名を冠した駅が合計21もある。東京が最も多く11駅、次いで埼玉と神奈川が5駅ずつだ。なぜこんなに多いのか。
駅名記録の謎

駅名を決めた主体が積極的に記録を残そうとしなければ、数年で忘れ去られてしまう。地域によっては、駅名決定時の争いを記した文書が残っているところもあるが、これはむしろ例外である。
これは駅名に限ったことではない。昭和から平成にかけて、住居表示改称によって多くの地名が再編、統合、新設された。そのとき、なぜその地名が選ばれたのかを知ることは容易ではない。
例えば、現在の東京都中央区東日本橋には「両国」という地名があった。そのため、現地では「本来の両国はこちら」という主張が残っている。しかし、住居表示において、なぜ両国ではなく東日本橋という新町名になったのかを示す資料はない。
つまり、当時は関心が高かったにもかかわらず、いったん決定されるとほとんど記録されなかったのである。自分たちで決めたわけではない駅名ならなおさらである。武蔵がつく駅名の記録が少ないのは、このためだろう。
それにしても興味深いのは、同一駅名を避けるために旧国名が好まれた理由である。旧国名以外にも、「上中下」「東西南北」を使うなど、同一駅名を避ける方法はある。全国の駅名の由来を探れば、「上中下」「東西南北」よりも旧国名が好まれた理由がわかるかもしれない。