「生活保護受給者」は運転すべきでない? そもそも自動車は贅沢品か? ネットに渦巻く“終わりなき議論”を考える
生活保護制度はセーフティーネットの最後のとりでである。本稿では、生活保護制度利用者の自動車保有をめぐる論争の背景を紹介する。
生活保護制度と「移動する権利」
冒頭の政府見解における「生活保護世帯以外の均衡」について、厚生労働省は次のように定義している。
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「水準均衡方式(昭和59年~現在)当時の生活扶助基準が、一般国民の消費実態との均衡上ほぼ妥当であるとの評価を踏まえ、当該年度に想定される一般国民の消費動向を踏まえると同時に、前年度までの一般国民の消費実態との調整を図るという方式」
つまり、「生活保護世帯以外の均衡」は、地域の自動車普及率との兼ね合いと解釈できる。
自動車検査登録情報協会によると、2022年4月末の平均普及台数は1世帯当たり1.032台。数値が低いのは東京の0.421台など都市部が中心で、数値が高いのは福井の1.708台など地方が中心だ。
普及台数や自動車の必要性、通勤・通院・通学などの必要性を考えても、生活保護を受けていない世帯とのバランスにおいて保障されるべきである。
生活保護制度は、生活保護受給者の不正受給などの課題を抱えている。しかし、誰にでも病気になる可能性はあるのだ。
政府の見解は「生活保護者は原則、自動車を保有できない」とも受け取れる。少なくとも、
「一定条件のもと、自動車保有を認めている。自動車保有を理由に生活保護制度の利用をちゅうちょせず、積極的に相談してほしい」
という見解を示してほしい。
セーフティーネットの利用から社会復帰まで、「移動する権利」が保障される社会を望みたい。自動車はぜいたく品ではない。