「生活保護受給者」は運転すべきでない? そもそも自動車は贅沢品か? ネットに渦巻く“終わりなき議論”を考える
生活保護制度はセーフティーネットの最後のとりでである。本稿では、生活保護制度利用者の自動車保有をめぐる論争の背景を紹介する。
就労機会拡大と保有意義
確かに、生活保護制度のなかで自動車保有を認めるには、車検費用や任意保険の問題など、維持費の観点で大きなコスト負担が発生する。しかし、自動車保有が就労につながるケースを考えれば、社会保障費を削減できる可能性がある。
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例えば、月収10万円の場合、社会保険料負担は1万3867円と計算される(マネーフォワード調べ)。
つまり、維持費分の納税が可能なら、生活保護受給者が自動車を保有することは社会全体にとってメリットがある。この点について、厚生労働省の通達では、次の場合に保有を認めるとしている。
・居住地もしくは勤務先が、公共交通機関利用困難地にあるか、深夜業務従事者
・勤務が自立に役立つ
・地域の普及率、自動車非保有低所得者との均衡
・処分価値が低い
・当該勤務の収入 >維持費
事例の場合、居住地が公共交通機関の利用が困難な地域かどうか、自動車普及率とのバランスで要相談という見解だろう。しかし、維持費にかかる税負担があり、それが就労意欲につながるのであれば、生活保護制度利用者にも自動車保有を認めるべきではないか。
一方、公共交通機関の利用が困難な地域で、健常者が通院のために自動車を利用する場合、維持費は原則として親族が負担しなければならず、通院時の自動車保有には厳しい条件がある。
その場合、医師が認めれば通院移送費の支給やタクシーの利用が認められることもあるので、福祉事務所や病院の相談員に確認が必要だ。
また、田舎であればあるほど、タクシーが存在しない地域など、通院に関して格差がある。日本国憲法で保障された「移動する権利」との兼ね合いも議論すべきだろう。