「生活保護受給者」は運転すべきでない? そもそも自動車は贅沢品か? ネットに渦巻く“終わりなき議論”を考える

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生活保護制度はセーフティーネットの最後のとりでである。本稿では、生活保護制度利用者の自動車保有をめぐる論争の背景を紹介する。

資産の定義とその議論

生活保護のイメージ(画像:写真AC)
生活保護のイメージ(画像:写真AC)

 近年、国会質疑のなかで「生活保護制度利用者の自動車保有」についての議論が行われた。概要は次のとおりだ。

・生活保護制度は約60年前に制定され、現行まで自動車は「資産」の扱い。
・現在、自動車保有を例外的に認められるのは、障がい者、交通空白地帯居住者の通勤、通学、通院に限定される。
・一方、買物や保育園送迎など「日常生活の利用」には自動車は利用できない。
・障がい者は日常生活の自動車利用を制限されるため、タクシーなどを利用し、逆に保護費が高くなる場合もあるとされる。
・また、生活保護制度の利用を躊躇するのは「自動車保有」が認められないのも原因ではないか。
・自動車保有を時代に合わせ見直すべき。

 上記の質疑に対し、政府の見解は「自動車は資産に該当する。また、車両維持費や生活保護世帯以外の均衡から、生活保護制度利用者の自動車保有は原則認めない」だった。

 まず、資産とは何かを定義したい。国税庁管轄の研修機関資料によれば、資産とは

「金銭に評価できるものであり、それが法的に譲渡可能なもの」

である。

 いうまでもなく、買い取り時の評価額が「0円」の自動車が存在する――これは周知の事実である。つまり、昔と違って資産に含まれない自動車が存在するのだ。

 次に、維持費の観点から、駐車場大手のパーク24(東京都品川区)は、同社サービスの登録ユーザー911万人を対象に「自動車の維持費」に関する調査を実施した。

 調査対象は自動車保有者3542人で、維持費として支払っている金額は「1万5000円以下」が34%で最多だった。また、2756人が回答した維持費に関する設問では、半数近くが最大の維持費負担は

「車検費用」

と回答している。

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