EV普及を邪魔する「コバルト不足」を解決? 東芝“新型リチウムイオン電池”が秘めた大きな可能性、時代は原料争奪戦から新技術開発か

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東芝は11月28日、リチウムイオン電池の新技術開発に成功したと発表した。具体的にどのような技術なのか。その概要を説明する

新材料が生む高性能電池

今回、東芝が試作した電池の外観(画像:東芝)
今回、東芝が試作した電池の外観(画像:東芝)

 2023年11月28日、東芝はリチウムイオン電池の新技術開発に成功したと発表した。2028年の実用化を目指す。この技術は、これまで電池の正極素材として欠かすことのできない重要な材料であったコバルトを使用することなく、従来よりも優れた性能を発揮する電池を実現するものである。具体的にどのような技術なのか。その概要を簡単に説明したい。

 ここ数年、世界の電気自動車(EV)市場は活況を呈しており、それにともない車両製造に欠かせないリチウムイオン電池の需要も拡大している。その一方で、電池の製造に欠かせないレアメタルの需要増にともなう電池材料の国際価格の変動は、関係企業にとって頭の痛い問題となっている。

・コバルト
・ニッケル
・リチウム
・マンガン

特にコバルトの推定埋蔵量は決して多くなく、需要増に対応した資源争奪戦は過熱の一途をたどっていた。

 関係各社がまず取り組んだのは、安定供給を求める新たなサプライチェーンの構築だった。その第1歩は、そうしたレアメタルに頼らない新技術の開発だった。まず注目されたのが、コバルトの代わりにリン酸鉄リチウムを正極材料に使ったリチウムイオン電池だったが、急速充電能力や耐久性、低温性能の面でコバルト主原料正極に劣っていた。

 この問題を原材料の面から根本的に解決することを目指した東芝のリチウムイオン電池は、どのような材料で開発されたのだろうか。それは、5V級高電位正極とニオブチタン酸化物負極を採用したものである。

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