翼になぜか「支柱」付き! NASA・ボーイング共同開発機は、これまでの機体より何が優れているのか
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薄く長い主翼

ジェット旅客機が巡航する際の速度領域は、音の速さに近い遷音速(せんおんそく)と呼ばれる速度域なので、厚い主翼では抵抗が大きい。薄くすることができれば、飛行性能の点では都合がよい。
更に、長い主翼のほうが効率はよくなるので、長距離を少ない燃料で飛行するには、できるだけ細長い主翼が望ましいのだ。
そのような主翼を支柱なしで設計すると、強度を維持するための構造重量が増えてしまうため、満足な性能の旅客機は作れない。そこで、
「空気抵抗が少なく、揚力の発生も分担できる」
ような支柱を設計し、薄く長い主翼を支えてやれば、効率のよいジェット旅客機が実現できる。簡単にいうと、これがTTBWの基本コンセプトである。
飛行機の効率を表現する指標として、「揚抗比」という値が使われることが多い。これは飛行機を持ち上げる力(揚力)と抵抗(効力)の比率のことだ。
例えば揚抗比が「15:1」であれば、15tの飛行機を飛ばすのに1tの推力(飛行機を進行方向に推し進める力)が必要になることを意味している。揚抗比が高い飛行機は、より少ない推力で飛ぶことができるので、燃料消費も少なくなり、エネルギー効率が高いことになる。
現代の旅客機は「15:1~20:1」程度の最大揚抗比を実現しているが、X-66Aでは
「25:1」
を超える値が目標とされている。この高効率な機体形状に、低燃費で騒音の少ないGTF(ギヤードターボファン)エンジンが積まれることになっており、これはRTX(旧レイセオン)社が提供する。
もちろん燃料にも「持続可能航空燃料」(SAF:Sustainable Aviation Fuel)が採用される。これらの組み合わせで、旅客機の環境性能を総合的に大きく向上することが最終目標である。
TTBWのコンセプト自体は、過去に培われてきた航空技術の知見を組み合わせたもので、特別に新奇な発明というわけではない。また、このプロジェクトが成功したとしても、市場に登場するのは早くても
「2030年代の後半以降」
だ。しかし、これまでの「より速く、より大量に」という旅客機への要求に「より環境に優しく」が加わった結果、旅客機の基本形状を見直す動きが始まっているのだ。