EVは極寒での「試験基準」確立が必要ではないか【連載】和田憲一郎のモビリティ千思万考(6)
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極寒時の性能基準、悩ましい課題
筆者の経験からしても、極寒時におけるEVの特性把握に関しては、悩ましいことが多い。
各自動車メーカーにて独自の方法で測定していると思われるが、何か法規や試験基準が国際的に定まっているわけではない。そのため、数値が独り歩きしてしまうことを避けようと、メーカーは外部に公表しないことが多い。
例えば、極寒時における一充電航続距離を測定しようとしたとき、外気温が何度かによって結果は大きく異なる。5度も異なれば車両にとって影響が大きい。さらに、室内温度24度に設定するにしても、運転席などの一点か、室内平均温度なのかによって異なる。キャビンが大きいクルマと小さなクルマでは、暖房の温まり具合も異なる。
極寒時の急速充電時間なども、急速充電器の仕様や新エネルギー車の電池仕様によって、かなり変動があると思われる。
このため、2021年10月8日配信の記事(「EVの「サーマルマネジメント」が競争激化 先頭テスラを追うのは?」)でも述べたように、各自動車メーカーは寒冷時の影響に対応するため、EVの暖房方法としてPTCヒータ方式、ヒートポンプ方式、ガスインジェクションヒートポンプ方式、最近ではテスラによるオクトバルブ付TMS(サーマルマネジメントシステム)など、多彩な方法を開発してきた。
今後EVを世界各地にて普及させようとすると、極寒時における実力向上は避けて通れない。筆者の勝手な私案かもしれないが、世界で最も新エネルギー車が進む中国と、これから普及を行おうとする日本が、このような極寒時における「試験基準」を共同研究案件として取り上げ、作り出すことも良いのではないだろうか。
試験基準が明確となれば、その試験結果で車両の優劣がはっきりし、優れた車両はどのような対策を講じているのかなど、ベンチマークとすることができる。つまり車両全体の底上げにつながるであろう。
EVは普及がまだ始まったばかりであり、多くの課題をオープンにしながら向上させていく方法が望まれるように思われる。