京成・新京成「2025年合併」に隠された戦略とは? “ディズニー株”巡る外国人投資家とのバトル余波なのか

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京成電鉄は新京成電鉄を吸収合併すると発表した。両社はもっと昔に“合体”しても問題がなかったものの、さまざまな理由から順延されてきた。

中長期経営計画から読み取れる対抗策

パリサー・キャピタルのウェブサイト(画像:パリサー・キャピタル)
パリサー・キャピタルのウェブサイト(画像:パリサー・キャピタル)

 また、別の事情通はこんな推論を展開する。

「注目はパリサーが提示した『15%』の数字だろう。持ち株数が20%を切るとOLCは京成の持分法適用会社ではなくなり、単なる『その他の有価証券』となる。すると京成側はOLC株を時価で評価しなければならず、評価額は一気に跳ね上がって資産額も大きく膨れ上がる。これではPBR(株価純資産倍率。株価を1株当たり純資産で割った値で、『1』を下回ると株価は割安と判断される)も、現在の2から0.6程度に下がる可能性が高い。そうなると現在東京証券取引所が掲げる『PBR1未満の解消』に抵触して、京成は厳しい対応を求められる」

 ただし、

「パリサーなど“モノいう株主”によるこうした攻勢を、京成はすでに想定済みで、京成は着々と策を講じており、中長期経営計画の中身を見れば読み解ける、ともいわれる」

と、運輸業界関係者は話す。

 実際、前中期経営計画の「E4プラン」(2019~2021年度)では、2020年開催予定だった東京五輪や、政府が推進の「インバウンド(訪日外国人)2030年6000万人」に前のめりの中身で、スカイライナーの充実に経営資源を集中し、

“成田1本足打法”

で挑んだ。

 だが不運にもコロナ禍が襲い、五輪は順延・無観客を余儀なくされ、インバウンドも実質シャットアウトとなって、スカイライナーは閑古鳥が鳴く状況に。“成田1本足打法”は悲惨な結果に終わる。

 これを踏まえたのか、2022年7月に公表した次の2022~30年度長期経営計画「Dプラン」では、「成田」の文言は控えめとし、代わりに「沿線の開発・活性化」や、前計画ではほとんど触れていなかった「沿線観光の振興」を前面に掲げている。某事情通は、この「沿線」の文言に注目すべきと強調する。

「既存エリアの観光振興場所として、成田(成田山新勝寺)や押上(東京スカイツリー)、上野(動物園や各種美術館・博物館)などを挙げ、インバウンドの増加も踏まえた強化を強調するが、並行して『既存エリアに捉われず、シナジーが発揮できるエリアへの事業展開を検討する』とも訴える点が気になる。京成にとり最大の観光資源はTDRで、『今後はOLCとの協業を積極的に図りシナジーを生むように頑張ります』の宣言とも読み取れる。ある意味、パリサー側に対するアピールでは」

 ただ、それなら単純明快に、Dプランに「TDR」「OLC」を記載した方が、話が早いのでは、と思いがちだが、

「京成はこれまでOLCへの敵対的買収に対し、買収防衛策で対抗すると宣言し続けた。友好的な株主に、大量の新株発行を優先的に行って、株式全体のボリュームを増やすことで敵対者の比率を下げる戦術などだ。だが2019年に買収防衛策の導入を撤廃。理由は不明だが、これまで目立たないようにしてきたOLCの存在を、突然Dプラン上で大きくうたえば、目立ち過ぎて『資本のねじれ』や資産効率の悪さなどに世間の耳目が集まり、京成の経営陣にとっては喜ばしくない。要は『寝た子を起こす』事態を避けたのでは」

と深読みする。

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