京都「観光公害」止まず ごみ箱付近に“ペットボトル”散乱、コロナ前以上の賑わいに観光地“焼け石に水”の現実
韓国や台湾、欧米からの観光客が急増

10月の訪日外国人観光客数がコロナ禍前の2019年10月を上回った。京都市など国内の主要観光地は観光公害対策に躍起だが、急増する訪日客に追いつかない。
京都市東山区の東山五条交差点に京都市バスがやってきた。停車中の車内をのぞくと、金髪の白人マダム、赤ちゃんを抱っこする黒人男性、ヒジャブ(イスラム教徒の女性が髪を隠すために使う布)で髪を覆ったアジア系の若い女性が目に飛び込んでくる。車内だけを見ていると、ここがどこの国なのか、わからなくなってきた。
「清水寺は混雑しているようだけど、絶対に見ておきたい」
五条坂停留所でバスを降りた20代の米国人カップルに話を聞くと、明るい笑顔が返ってきた。これから坂道を上って清水寺へ向かうという。
下京区の京都駅では、東京からの新幹線や大阪からの新快速が到着するたびに、大勢の訪日客が駅前にあふれ、烏丸口のバスやタクシー乗り場に長い列をつくっている。
京都市を訪れる観光客が最も増える紅葉シーズンを前にした11月中旬、京都市内は訪日客の姿が目立った。
訪日者増加による景気浮揚

コロナ禍による入国制限が緩和されて約1年。日本政府観光局がまとめた10月の訪日客推計数は全国で251万6500人に達し、コロナ禍前の2019年10月(249万6568人)を
「0.8%」
上回った。新型コロナの感染拡大後、コロナ禍前より多い訪日客が来たのは初めてだ。
コロナ禍前に訪日客の中心だった中国人観光客が日中関係の悪化もあって減少するなか、欧米や中国以外の
「東アジア、東南アジア」
からの観光客が大きく伸びている。国別で最も多いのが韓国の63万1100人。次いで、台湾の42万4800人、中国の25万6300人、米国の21万1900人と続く。日本政府観光局は折からの円安が増加を後押ししたと見ている。
その結果、高島屋は下京区の高島屋京都店など4~9月の全国店頭免税売上高が過去最高の580億円に。オリエンタルランドが運営する千葉県浦安市の東京ディズニーリゾートは4~9月の来園者に占める訪日客の割合が過去最高の13%を記録した。訪日客増加は小売業者や宿泊業界に朗報だが、
「観光公害」(交通渋滞、騒音、自然環境への悪影響など、過剰な観光がもたらす悪影響の総称)
は深刻さを増している。