ジェンダー平等について「もう聞き飽きた」というなら、男女で“通勤経験”が全く異なることを考えてほしい
都市は必ずしも女性にとって安全に移動できる空間ではない。移動する人が「女性」とみなされることによって、モビリティの時間と空間に余分なリスクやハードルが発生することがあるからだ。
都市の危険な通勤
さらに女性にとっては、交通と繁華街からなる「第三空間」もかなり厄介だ。
かつて「通勤地獄」と呼ばれた満員電車の過酷さは、多くの人が共有している。しかしこれに加えて、女性は男性以上に公共交通で痴漢や“ぶつかり男”の脅威にさらされることが――男性と比較して――多くなる。
繁華街などでは、いたずらや冷やかし、ナンパ、キャッチなどの被害に遭うこともある。本来、加害者は取り締まられるべきであり、被害者に過度な負担をかけることは筋違いだ。しかし、女性は性暴力のリスクを回避するテクニックを身につけることを――不本意ながら――求められることもある。
公共交通は匿名性が高く、流動的で閉鎖的な空間であり、出入りが激しく、多数の他人が詰め込まれている。不快な接触があったとしても、それが「悪意」のある行為かどうかを判断するのは難しい場合がある。
「加害者」が誰なのかが特定しにくいこともある。公共交通で大声を出したり、見知らぬ人に話しかけたりすることがマナー違反になる場合、人は他人に助けを求めることをためらうかもしれない。通勤客の多くが男性だった時代、ラッシュアワーに女性が公共交通を利用することの難しさは、今以上だっただろう。
しかし、「女性の社会進出」が進んだ1990年代から痴漢対策は強化され、2000年代からは女性専用車両が導入され、現在は電車内の防犯カメラも定着した。また、スマートフォンの普及により、卑劣な行為がカメラに記録されることも多くなり、痴漢防止アプリも開発されている。
こうした対策によって都市部での性暴力がなくなったわけではないが、以前より可視化されるようになったことは確かなようだ。