「DMV」営業運行開始 鉄道と道路“どこでも”とはならない? その課題
DMV 初の営業運行開始

徳島県の第三セクター、阿佐海岸鉄道が2021年12月25日、DMV(デュアル・モード・ビークル)の営業運行を始めた。マイクロバスをベースとした線路と道路の双方を走れる車両で、営業運転は日本初となる。
現在のDMVにつながる車両の開発を最初に始めたのはJR北海道だ。2004年から試験運行が繰り返され、道内ではその様子がマスコミでもしばしば報じられた。北海道だけでなく全国の鉄道に貸し出されて試験運行が繰り返されるなど、ローカル線を抱える地域からの期待は小さくなかった。
しかし、JR北海道でのDMVの開発は、2011年に発生したスーパーおおぞら火災事故などを契機に暗雲が立ち込める。安全への投資と北海道新幹線に経営資源を集中する方針へ転換した同社は、DMVの開発どころではなくなり、2014年には開発を正式に断念した。
それと前後して、DMV導入を具体化させつつあったのが、徳島県ならびに阿佐海岸鉄道だった。
阿佐海岸鉄道の阿佐東線は、その名が示す通り、阿波(徳島)と土佐(高知)を結ぶ路線の一部として旧国鉄が完成目前まで建設したものの、経営悪化により工事を中断。これを第三セクターとして引き継いで開業にこぎつけた。このため線路施設も比較的新しく、高架線が主体となっている。とはいえ営業距離は海部~甲浦間8.5km(2020年からJR牟岐線の阿波海南~海部間を引き継ぎ10.0km)と短く、徳島県の末端部とあって経営は厳しい。
車両も線路も一変した阿佐海岸鉄道

今回のDMV導入については、これまでの審議会のなかで、車両自体が観光資源になること、鉄道とバスのシームレスな交通体系を形成すること、そして高架主体の線路と道路をつなぐことで南海トラフ地震などにおいても交通機能の維持が図れる、などの効果が挙げられている。また、DMV開業後は土日の1往復のみだが、阿波海南から室戸岬を経て高知県室戸市まで直通する。徳島と高知を結ぶ役割をDMVで果たすことができたのだ。
ただ今後の展開は未知数と言わざるを得ない。導入にあたり、阿佐海岸鉄道には線路から道路へ降りる設備や、車両の鉄道モードとバスモードを15秒ほどで切り替えるモードインターチェンジといった設備が設けられたが、必要なものはそれだけではない。車両が軽すぎるため、鉄道用の列車検知設備も使えず、信号類もDMV用に造り替えられた。従来のJR牟岐線からの直通運転も取りやめ、“DMVだけ”の輸送形態が形成されている。
つまり、仮に運行区間を拡げるにしても、線路と道路を使って「どこでも走れる」というわけでもなく、運行には鉄道とバスの事業免許が必要だ。運転士も同様で、鉄道の動力車操縦者運転免許とバスの二種免許の双方が必要であるため、運転できる人はかなり限られてくる。この点も、今後の人材確保と育成に影響する可能性がある。人口減少社会のなか、DMVが真に交通の持続可能性を発揮できるかが注目される。