「園児バス置き去り」撲滅に向かって状況改善中 でも安全装置設置に反対意見も いったいなぜ?

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2021年7月、福岡で5歳の園児が送迎バスに置き去りにされ、尊い命の重さを知る事件があった。続いて2022年には静岡でも同様の事件が発生した。

車内の置き去りに関する実態

送迎バスのイメージ(画像:写真AC)
送迎バスのイメージ(画像:写真AC)

 三洋貿易(東京都千代田区)は、小学生以下の子どもを乗せて運転するドライバーを対象に、「子どもの車内置き去り実態調査2023」を実施した。同社が発表した結果の概要は次のとおりだ。

・幼稚園・保育園送迎担当の95.9%が、車内置き去りにより、毎年のように子どもの熱中症事故が発生していることを認識
・「1年以内に子どもだけを残して送迎バスを離れた経験がある」との回答は1.5%まで減少
・54.3%が「今後も園児が取り残されることは発生すると思う」と回答。ただし、76.0%が「自分の園では発生しないと思う」とし、危機感と当事者意識のギャップが明らかに。
・安全装置の設置義務化には「賛成」が84.3%と「反対」の3.7%を大きく上回る。

 車内への子どもの置き去りについては、対策意識が高い。特に、バス車内での居眠りや座席に隠れるケース、また、故意に隠れるケースとして次のような事例がある。

・「みんな降りたかな?」と声をかけながら一番後ろまで見にいったら椅子から降りて丸くなってる子がいた。「大丈夫?」と抱きかかえると「みつかった~」とにこにこ

 現場の先生方は、間違いなく気が抜けない状況だ。いくら車内検知器があっても、隠れている子どもや居眠りをしている子どもは、車内の温度が急上昇すれば、数十分で命の危険がある。

「子どもを残しての送迎バスを離れた経験」では、2022年の5.6%から1.5%に減少しており、幼稚園・保育園関係者の意識の高さがうかがえる。

 また、「安全装置の装備が義務化」による安全設備の設置率も、同年6月時点で全国平均約55%となっており、安全設備が一定の効果を上げていることも改善に寄与している。

 一方で、安全装備の義務化に対する「反対意見」も少なからず存在する。筆者自身のアンケート調査でも、少数ながら見られた。また、回答者の約5割が「今後も園児が取り残されることは発生すると思う」と認識している。背景は何か。

 それらを理解するためには、先に「送迎用バスの置き去り防止」対策について知っておく必要がある。

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