米国「スクールバス」もドライバー不足! そんな危機を救った、ウィスコンシン州の“ママさん軍団”の奮闘とは

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米国では、スクールバスは最も一般的な通学手段である。児童や生徒を安全に通学させる重要なシステムであり、また、公共交通機関がなく、自家用車での移動が必要な郊外では、通学の手段として不可欠なものとなっている。

地域と共に育む子育て

スクールバスのイメージ(画像:写真AC)
スクールバスのイメージ(画像:写真AC)

 母親たちの乳幼児を同乗させてのドライバー勤務は、さまざまなメリットを生んでいる。

・ドライバー不足の解消
・子育て中の親への就業機会提供

というふたつの大きなメリットはもちろんだが、実際に従事しているドライバーからは、母親として「助かる」ことがあるのだそうだ。

 子育て経験者ならわかる人もいると思うが、ぐずる赤ん坊は車に乗せてドライブすると泣きやむことがある。車でのドライブは、赤ん坊にとって決して相性の悪くない環境なのだ。

 また、ほかにも意外なメリットも報告されている。それは、

「子どもたちの交流」

という社会性を育む面での効果だ。あるお母さんドライバーが、インタビューに答えていたが、彼女の子どもには、明らかに「出勤」を楽しみにしているような反応が見られるそうだ。バスに乗り込んでくる「お兄さん、お姉さんたち」に会えるのを楽しみにしているようで、積極的に「乗務」したがるという。

「お兄さん、お姉さんたち」側である児童や生徒たちにも変化が表れている。彼らにもまた、バスに常駐している小さな「乗務員」にあいさつし、声掛けをしたり、あやしたり、そういった行動が自然に出てきているという。

 インターネット社会に生きる現代の子どもたちは、学校や家庭以外で他者とコミュニケーションをとる機会が少なくなりがちだ。このような交流から生まれるコミュニケーションは、地域の子どもたちにとって、社会性を育てるという面でのよい相乗効果となり、

「地域でともに子育てをする」

という地域社会の理想形がそこに見えてくるのだ。このウィスコンシンの「お母さん軍団」の活動は、ドライバー不足という暗くどんよりした現象を、柔軟かつユニークな発想で地域社会に光を投げかける形へと変えた。

 このように固定概念にとらわれない発想の柔軟さをもつことが、就労問題を含めるさまざまな社会問題を解決へと導くヒントを含んでいるのではないだろうか。

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