「日本の自動車メーカー = 遅れている」は間違い! 話題の“SDV論争”から読み解く、安易なメーカー批判という時代兆候
近年、「SDV」という三文字が頻繁に登場することが増えた。そしてそこで垣間見えるのは「日本の自動車メーカーはSDV開発で後れを取っている」というある種の“決まり文句”である。本当か。
自動車設計の進化

ここからは少し視点を変えて、SDVとは何かを考えてみたい。
まず、車両を制御するソフトウエアを開発するためには、クルマのハードウエアの機能をすべて数値化する必要がある。エンジン、サスペンション、バッテリー、モーターを制御するためのソフトウエアは、詳細な数値化なしには開発できない。
テスラはこの分野で本当に最先端なのか。それも少し違う。現在の自動車設計の基本原則は数値化である。内燃式であれ電気式であれ、あるハードウエアがどのように機能するのか、その機能を向上させるためにはどうすればいいのか、数値化を避けることはできない。
設計現場では、各種センサーで収集した数値をデータとして総合的に判断し、仕様を決定する。その時点では、こうして完成した機能部品としてのハードウエアに、ソフトウエアが直接介在しているわけではない。しかし、データという名のソフトウエアの存在は、完成に至る過程で欠かすことができない。
もちろん、最終的な仕様決定の前には数値データだけでなく、テストドライバーによる感性評価も加味されるが、それはまた別の話である。ちなみに、日本の自動車メーカーはテスラが誕生するずっと以前から、数値データをもとに車両設計を始めている。