京都市の「観光公害」 45年前廃止の「市電」が現役だったら避けられた?

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京都の観光公害は依然として解決されていない。この状況を受けて、インターネット上には「京都市電を廃止したのは間違いだった」などの意見が出ている。

立ちはだかる財政難

京都市(画像:写真AC)
京都市(画像:写真AC)

 京都市でLRT建設が進まないもうひとつの理由は、京都市の財政難だ。2022年度決算で京都市は22年ぶりに黒字を計上したが、その額は77億円にすぎなかった。1990年代まで、京都市は地下鉄、立体交差、梅小路公園、京都コンサートホールなどの都市インフラ整備を加速させた。

 これらの多くは、1994(平成6)年から1998年にかけて発行された総額5000億円の市債によって賄われた。さらに、東西線の利用者数の伸び悩みを補うために市債を活用する方針がとられ、2017年までに967億円分が発行された。見通しの甘い公共事業が実施された結果、市はその補填を余儀なくされているのだ。

 京都市は財政再建のため、二条城や動物園などの公共施設の値上げや、敬老パスの条件引き締めに乗り出した。一方、2021年に159億円をかけて改修された市役所は、その豪華な設備が批判されている。現在でも、京都市は自治体破綻に等しい財政再建団体転落の危機があるとうわさされ、一度は断念した古都税(寺社からの課税)を求める声もある。

 新線が実現した宇都宮市でも、市の財政が心配されていた。京都市の場合はさらに深刻だ。つまり、いまLRTを建設するということは、市が破綻寸前であり、赤字を解消するために新たに積極的な投資をしなければならないことを意味する。

 それは容易ではない。こうした事情から、京都市のLRT計画は、導入・整備計画の策定を目指していると報じられた2012年以降、まったく動かなくなってしまった。少なくとも財政的な見通しが立たなければ、京都の公共交通の状況は少しも変わりそうにない。

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