京都市の「観光公害」 45年前廃止の「市電」が現役だったら避けられた?

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京都の観光公害は依然として解決されていない。この状況を受けて、インターネット上には「京都市電を廃止したのは間違いだった」などの意見が出ている。

明確なビジョンがない京都市

富山市のLRT(画像:写真AC)
富山市のLRT(画像:写真AC)

 京都市で早くからLRTが構想されながら宙に浮いたままになっている理由は明らかだ。富山市も宇都宮市も、首長がリーダーシップを発揮した。また、将来の都市計画にLRTがふさわしいと判断するまで議論を重ねたからこそ、実現に至ったのである。

 これに対して京都市は、市電廃止は失敗だったといわれるものの、巨費を投じてLRTを推進する決断をする人材に恵まれていない。

 将来の交通体系を明確に提示してLRTを実現した宇都宮市に比べ、京都市には明確なビジョンがない。その一例が洛西(らくさい)ニュータウンの交通網整備だ。このニュータウンは1970年代に京都市が開発した。

 当時、京都市はまだ建設されていなかった地下鉄東西線が洛西ニュータウンを通って、長岡京駅まで建設されるとしていた。それを信じて多くの住民が移り住んだ。しかし、東西線は2008(平成20)年の最終延伸以来、凍結されたままだ。2011年以降、京都市の基本計画から延伸構想の記述が消え、2021年には西京区の基本計画からも消えている。

 2020年の市長選挙で門川大作市長は、これに変わるものとして「地下鉄東西線~洛西~長岡京市を新交通システムなどで結ぶ構想」を公約として掲げている。

 市長選挙からすでに3年が経過しているが、この構想が具体的にどのようなものなのかは示されていない。

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