京都市の「観光公害」 45年前廃止の「市電」が現役だったら避けられた?

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京都の観光公害は依然として解決されていない。この状況を受けて、インターネット上には「京都市電を廃止したのは間違いだった」などの意見が出ている。

計画が具体化しなかったワケ

京都駅(画像:写真AC)
京都駅(画像:写真AC)

 この時期には京都市もLRT導入に向けて積極的な姿勢を示している。2005(平成17)年、京都市はLRTを推進する「新しい公共交通システム調査報告書」を公表した。この報告書に基づき、2007年にはLRTに代わるバスの運行に関する交通規制の実証実験が今出川通りで行われた。

 しかし、この実験以降、LRT導入に向けた動きは停滞したままになっている。京都市のウェブサイトでは、2007年前後の資料が最新情報として掲載されたままであり、それ以降の進展は見受けられない。

 計画が具体化しなかった理由は、ズバリ

「財源」

である。LRTの推進派はフランスから輸入された「交通権」の概念を援用し、税金を活用して公共交通を運営・維持することの重要性を提言していた。しかし、この考え方が広く受け入れられなかった。これについては、前述の戸田氏の論文に詳しい記述がある。

「欧米と異なり、わが国では公共交通は利用者負担/税負担によって運営されるべきとの認識が一般化していない。(中略)国民の間で「地方公営企業や三セク会社は財政赤字を増大させる非効率的な存在」という認識が一般化してしまっている。このような状況下では、LRTの経営主体が京都市の直営や三セク会社では、LRTの経営主体が京都市の直営や三セク会社ではLRT建設について市民の合意を取り付けることは至難の業だろう」

 1990年代以降、数々の都市がLRT導入を志向しながらも、実際に計画を実現させた例は

・富山市
・宇都宮市

に限られる。この事実は、新しい公共交通システムへの投資に対する市民の理解を広く得ることの難しさを示している。

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