トヨタがモビリティショーで披露した「ステアバイワイヤ」は、本当に自動運転に必要な技術なのか

キーワード :
,
ジャパンモビリティショー2023のトヨタとレクサスの展示ブースには、テスラのヨークステアリングに似た異形ハンドルが展示されていた

技術開発と普及

自動運転のイメージ(画像:写真AC)
自動運転のイメージ(画像:写真AC)

 国土交通省による自動運転レベルの定義では、

・レベル3:条件付き運転自動化
・レベル4:高度運転自動化
・レベル5:完全運転自動化

と定めている。

 2021年3月に発売されたホンダ・レジェンドに搭載された「ホンダ・センシング・エリート」は、日本で初めてレベル3の自動運転を実現したが、現在の規制では、ドライバーがハンドルだけでなく視線も運転に集中しなくてもよい「アイズオフ」は一定の条件下でのみ可能であり、すべての状況で可能ということではない。

 日本政府は2025年までにレベル4の導入を目指しているが、レベル4の定義では「限定領域下においてシステムがすべての運転タスクを自動で行い、ドライバー不在でも自動車が走行するようになる」とされており、自動運転が許可されるのは限定されたエリアのみということになる。つまり、自動運転は限られたエリアでのみ許可される。

 では、レベル5はというと、「完全な自動運転が可能で、高速道路や一般道路など道路の種類に関係なく、どのような状況でもブレーンオフな自動運転を実現する」と定義されている。

 これらを踏まえると、SBWのメリットを自動運転時のハンドル格納機能に絞ると、自動運転レベル4以上ではSBWが必要となるが、そのようなレベルの自動運転車が普及するのは数十年後のことになる。

 SBWのもうひとつのメリットである可変ギア比ステアリングは、現在でもユーザーにとって大きなメリットがあるといえるが、懸念されるのはリンクレスによる安全性をどう担保するかだ。

 実はSBWは10年前から普及しており、世界初のSBW搭載量産車は2013年に発売された日産スカイラインに搭載された「ダイレクト・アダプティブステアリング」である。当時のSBWはリンクレスではなく、電気信号などの不具合でステアリングシステムが誤作動した場合のバックアップとしてシャフト軸を装備していた。

 現在、リンクレスシステムの導入が進んでいるが、2重、3重系統のシステム冗長化によるバックアップで安全性を確立するための研究開発が進められている。

 バックアップの仕組みを簡単に説明すると、何らかの電気的な故障が発生した場合でも、ECUやハーネスなど複数のハードウエアでステアリング操作を継続できることを保証するとともに、モーター出力の50%以上を確保するシステム設定としている。

 SBW技術の開発には、ティア1のステアリングシステムメーカーがしのぎを削っており、海外勢ではボッシュやゼットエフなどが普及に努めている。確実に安全を担保できる技術開発が進み、近い将来、SBWがデファクトスタンダードとなり、自動運転レベル4以上が普及する日が楽しみだ。

全てのコメントを見る