ヨーロッパの近郊車両に「2階建て」が多く使われている理由
欧州の大都市近郊で使われる車両には、座席数の多い2階建て車両が多く用いられている。いったいなぜか。
欧州のサービス向上

日本のラッシュ時のような混雑とは無縁の欧州は、近郊形車両も日本とは少々異なる。欧州も日本と同様、近年は大都市のドーナツ現象(地価高騰などにより大都市中心部の居住人口が減少し、周辺部の人口が増加する現象)が顕著で、郊外や近隣都市からの遠距離通勤者が増えている。
その都市周辺部との間を結ぶ近郊列車は、中心部の地下鉄などとは異なり、30分以上~1時間程度の乗車時間となることから、やはり着席を希望する乗客が多い。そのため大都市近郊で使われる車両には、座席数の多い2階建て車両が多く用いられている。
もちろん、座席に座りたい人が多いのは日本も同じだが、日本の場合は乗車人数があまりに多く、乗降に支障をきたすことになりかねないため、3~4ドアのロングシート車に頼らざるを得ないというのが実情だ。
日本にも2021年まで運用されたオール2階建ての215系車両が存在したが、ドアの数が少なく、日本のラッシュには不向きであるため、座席数限定の湘南ライナーや日中の快速、週末の臨時快速などで使用されるにとどまり、増備や後継車が出ることもなく役目を終えた。
日本と同様、中・近距離客の輸送に徹するといった感じの欧州の近郊列車であるが、近年はサービス向上に力を入れる鉄道会社が増えてきた。