横断歩道の信号は「点灯時間」を延ばせるの? 素朴なギモンの答えとは

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歩行者の安全には交通ルールを守る自己意識が重要だが、本稿では横断歩道信号機に焦点を当て、その歴史や「秒速1秒」の裏側、安全効果などについてリポートする。

歩行速度が秒速1mに設定された理由

高齢者のイメージ(画像:写真AC)
高齢者のイメージ(画像:写真AC)

 歩行速度を秒速1mとしたのは、斉藤威(1986年)が交差点内の1万人のデータから報告した歩行速度に基づく。2022年にレイ・フロンティア(東京都台東区)が発表した歩行速度のデータでも同様の結果が出ており、最新のデータでも歩行速度の妥当性が示されている。

 一方、文部科学省が2020年に実施した新体力測定の結果によると、65歳以上の男性高齢者は6分間に約620m歩くのに対し、75歳以上は580m。女性高齢者ではさらに低く、65歳以上で6分間の歩行距離は約590m、75歳以上では約530mとなる。

 秒速1mで計算すると、6分で660mとなり、交差点での「秒速1秒」の点灯時間が無理な横断につながる可能性が推察される。そのため、

・高齢者用の押しボタン式横断信号機
・地域実情や陳情を考慮し、点灯時間を設定する

などの対策がとられている。

 筆者(伊波幸人、自動車ライター)の経験例では、自宅の向かいにコンビニがある障害者。歩行速度の低下により、押しボタン式信号機の点滅時間内に道路を横断することが難しい。所轄の警察署に相談し、押しボタン式信号機の点灯時間を延長して対応してもらった。見通しの悪い夕方でも安全に通行できるようになった。

 事例のケースは「押しボタン式の横断歩道信号機」であり、延長された信号は必要なときだけ押せば使用できるため、交通の流れへの影響が少なく許可されたのだろう。
歩行者信号機を延長すれば、歩行者が安全に通行できる場合もある。しかし、車両のスムーズな通行のために適切な時間だけ点灯する必要があることも事実である。

点灯時間が長いと、ドライバーや道路を横断して待っているほかの歩行者にストレスがかかり、待たされる時間が長くなる。
歩行者信号機の点灯時間を適切に設定することで、歩行者の安全を確保するとともに、円滑な交通を確保し、他の歩行者やドライバーのストレスを軽減する。

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