巨大な円筒形の帆「ローターセイル」に世界が注力 巨大船エコに 古くて新しい風力推進

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甲板に巨大な円筒を立て連ねた「ローターセイル」搭載船の検討が世界中で進んでいる。その多くは巨大な貨物船をエコにするため。もともと100年前に発明された技術だが、現代のローターセイルは軽量で、扱いやすさも考慮されている。

円筒をレールで動かすシステムも

ローターセイルを搭載した新造船「Afros」(画像:Blue Planet Shipping)。
ローターセイルを搭載した新造船「Afros」(画像:Blue Planet Shipping)。

 アネモイは風力で推進効率を高めることによりCO2(二酸化炭素)、SOx(硫黄酸化物)、NOx(窒素酸化物)などの排出量も5~30%削減できるとしている。他の省エネ技術とも組み合わせられるため、2025年以降の契約の新造船に適用されるEEDI(エネルギー効率設計指標)フェーズ3やEEXI(既存船の燃費規制)、CII(炭素効率指標)といった環境規制への対策につなげられる。

 また、アネモイは荷役作業に影響が出ないよう、アンローダなど港湾設備の位置に応じて、ローターセイルを移動するレール展開システムも提供している。これは甲板に敷いたレールに沿ってローターセイルを縦方向や横方向に動かすもので、2人のクルーで簡単に操作でき、位置を変更させる時間も10分程度だという。

 新造船では6万4000重量トン型(ウルトラマックス)バルカー「Afros」、既存船では8万2000重量トン型(カムサマックス)バルカー「Axios」で採用済み。今年5月にはタフトン・インベストメント・マネジメント(英国)が管理するカムサマックスバルカー「TR Lady」(8万2000重量トン型)に搭載することが明らかになっている。

 なお、商船三井が公表したケープサイズバルカーのイメージ画像には横方向のレールが確認でき、同船にもレール展開システム方式が設置されると見られる。

●ローターセイル船、すでに鉄鉱石運搬船として運航中

 商船三井と協業するヴァーレはすでに、ローターセイルを搭載した32万5000重量トン型の大型鉱石船(VLOC)「SEA ZHOUSHAN」を運航している。同社をプロジェクトリーダーに韓国船社パンオーシャンと連携し、ノルスパワーのローターセイル技術を導入。中国の上海船舶研究設計院(SDARI)が船体設計とローターセイルとの統合を行い、新時代造船がローターセイルの搭載を前提にしたVLOCを建造した。ローターセイルを設置する工事はパックスオーシャングループの中国工場(舟山)で実施されている。

「SEA ZHOUSHAN」には5本のローターセイルが取り付けられており、最大8%の推進効率向上と、年間で最大3400tのCO2削減が見込まれている。ヴァーレは同船の運航によって燃費の向上とCO2削減の効果が確認された場合、同社の船隊のうち少なくとも40%が同技術を使用できるようになると推定している。

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