貨物電車「スーパーレールカーゴ」は失敗作だった? 東京~大阪間の輸送短縮に貢献も導入進まず、鉄道輸送注目のいま振り返る

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モーダルシフト(自動車による貨物輸送を、環境負荷の少ない鉄道や船舶に転換すること)の進展により、鉄道輸送の重要性が増している。この動向を受けて、さまざまな新しい取り組みが行われており、そのなかで開発されたのが「スーパーレールカーゴ」である。

効率的な輸送の確立

佐川急便のウェブサイト(画像:佐川急便)
佐川急便のウェブサイト(画像:佐川急便)

 JR貨物の、東京から大阪までの鉄道輸送時間をトラック輸送に匹敵する程度に短縮するこの企画提案に応じたのが佐川急便だった。

 佐川急便は開発されたスーパーレールカーゴのメリットを最大限に生かすため、輸送体制の確立に着手した。特に重視されたのは、

「積み込み時間の短縮」

である。荷物を素早く列車に載せることができれば、それだけスーパーレールカーゴの利点を生かすことができるためだ。

 この目的を達成するため、東京では荷物を城南店に集約しコンテナに積み込む作業を行う体制を整備した。城南店は、東京貨物ターミナル(品川区)と同一敷地内にあるため積み込み時間は大幅に短縮された。

 大阪側では大阪店に荷物を集め、5分以内の距離にある安治(あじ)川口駅に輸送する方式を採った。これにより、列車の締め切り時間間際まで積み込み作業を行うことが可能となり、効率的な輸送が実現されることとなった。

 各営業店および中継センターからトラックが出発する時間をダイヤ化することで、佐川急便は確実に荷物を積み込み、配達時間を厳守する体制を確立した。ダイヤ化によって荷物が積み込み拠点に到着する時間を正確に把握し、効率的な作業が可能になった。

 専門誌『自動車技術』誌第10号に掲載された記事「M250系直流貨物電車“スーパーレールカーゴ”の開発とその輸送利用」では、ダイヤ確立の過程で解決が必要だった複数の問題点が挙げられている。それらは次のとおりである。

・拠点ごとの終了時間に応じた人員調整
・中継拠点に荷物が一度に集中して到着することを防ぐための対策
・集配車台数およびドライバー人員の見直し
・お客様に対して集荷時間を前倒ししてもらうお願い
・集約センターの人員見直しによる作業時間の短縮
・お客様に発送時間短縮への理解を求める努力

これらのシステム見直しと併せて、佐川急便は専用コンテナと専用トラックを導入し、積載量を増やし、時間短縮を実現した。

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