「日本を裏切るなんて」 インドネシア初の高速鉄道開業でネットにあふれる軽薄な書き込み、建設支援は中国も、真の敵は“ヨーロッパ”である
インドネシア鉄道の将来展望

中国がインドネシア政府と結託して、日本の中古車を追い出し、日本のシェアを本気で奪おうとするならば、国営車両製造会社(INKA)を買収し、中国中車(CRRC)インドネシアとしてしまうのが一番手っ取り早い。今、INKAが作ろうとしている新車の半値くらいで、そこそこ品質の高い車両を大量製造できるようになる。
そうなれば、日本製車両への消耗品、メンテナンス用品納入を行っている多くの日系サプライヤー企業がインドネシアから出て行くことになる。しかし、インドネシア政府はそれを許さず、INKAをボンバルディアと組ませ続けた。
ボンディアなき後は、スイスのシュタドラーがINKAの後見人として名乗りを上げた。他のヨーロッパメーカーはゼロから1067mm軌間の電車を作りたくなかったのだろう。もっとも、シュタドラーが受注すれば、電機品やそのほかの部品は全てヨーロッパメーカーに発注がかかるから、悪い話ではない。
ただし、INKAとシュタドラーの提携はもろもろの事情で解消し、ポストが不在の状態だ。10月25日に政府は、INKA、KAI、CRRC青島四方との間で、技術協力の覚書が締結された。しかし、この技術協力は高速鉄道車両の国産化を目的とするものと見られている。
140km程度の高速鉄道プロジェクトが中国に取られたからといって、
「インドネシアから撤退しろ」
「借款は付けるな」
などという主張は大間違いと筆者(高木聡、アジアン鉄道ライター)は考えている。まして、
「インドネシアはダメだから、これからはインドに行け」
など、現実を何も見ていない東京中心の安易な考えである。高速鉄道というアイコンがあるというだけで、インドと思うようであるが、インドには既に地場の鉄道産業が成熟していて、
「日系の参入できるチャンスはない」
と、メーカー技術者も、商社マンも断言する。
インドネシアがアジアにおける日本の鉄道ビジネスの最重要地であることはこれまでも、これからも変わることはない。現在のインドネシア鉄道界の勢力図と、今後のプロジェクトについての詳細は、また次回リポートする。