「日本を裏切るなんて」 インドネシア初の高速鉄道開業でネットにあふれる軽薄な書き込み、建設支援は中国も、真の敵は“ヨーロッパ”である

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中国の支援で建設されていたジャカルタ~バンドン高速鉄道がついに開業、10月18日から商用運行がスタートした。東南アジア初の高速鉄道ということで、日本のメディアからも大々的に報じられていた。しかし、記事のコメント欄やSNSには、中国、インドネシアを侮辱、罵倒するような声であふれかえり、目を覆いたくなるほどだった。

インドネシアの「本音と建前」

インドネシアへの国別民間直接投資額の推移(商業借款等を含む)。2015年以降、中国・香港からの投資が爆発的に増えたが、他国から投資もコンスタントに投資が続いている。また、シンガポール経由で日本からの投資がされていることもあり、日本からの投資が一概に減ったとはいい切れない(画像:高木聡)
インドネシアへの国別民間直接投資額の推移(商業借款等を含む)。2015年以降、中国・香港からの投資が爆発的に増えたが、他国から投資もコンスタントに投資が続いている。また、シンガポール経由で日本からの投資がされていることもあり、日本からの投資が一概に減ったとはいい切れない(画像:高木聡)

 日本はインドネシアをオランダ植民地時代から解放した英雄ではない。英雄は、初代大統領スカルノ以下、独立戦争を戦い抜いた全インドネシア人である。たとえ3年間であっても、オランダと同じく、日本は植民地として支配した侵略者だ。これが一般的なインドネシア人の考え方である。

 ただ、インドネシアは日本以上に

「本音と建前」

の世界である。公の場で不平、不満を口に出すことはめったにない。まして、声を荒らげることは絶対にしない。特にジャワの文化では、それが美徳とされている。日本もオランダ(欧米列強)も、同じ土俵にいる。にもかかわらず、インドネシアにおける日本の存在感が大きいように錯覚するのは、戦後の国際協力において、欧米は“人道支援”に重きを置いているために、目に見えにくいからである。

 一方の日本は、インフラ開発を中心に行ってきた。もちろん、数字的にも多大な予算を投じた。嫌ないい方をすれば、

「金づる」

なった。ただ、そのおかげで日イ関係は、表向きには良好なものになり、1970年代、80年代には日系企業が次々進出した。

 そんななか、2014年のジョコウィ政権発足後、中国からの直接投資が急激に増加した。これは、外資に対し非常に厳しい政策を取っていたインドネシア政府が、規制緩和にかじを切ったことによるもので、中国からの投資が相対的に増えるのは至極当然の結果である。この約10年で大幅な経済成長を遂げ、人々は裕福になり、街の風景が一変しているわけで、この政策自体が何ら批判される筋合いはない。

 もっとも、高速鉄道のような、国家プロジェクトともいえるいくつかの案件に一帯一路を掲げる中国が近づいてきたという事実もある(統計上はこれらも民間投資に計上されている)。今の中国はいわば、

「打ち出の小づち」

のような存在で、政府内に親中と呼ばれてもおかしくない人間がいるのも確かである(ジョコウィ大統領本人というよりも、その取り巻きに多い)。

 ただ、これも一時的な都合のよい「金づる」になっているにすぎない。金の切れ目が縁の切れ目である。そして、過去の経緯からも、極端な中国寄り路線は政権にとって命取りになる。あくまでも、インドネシアの外交方針は非同盟である。

 実際問題、この10年間で世の中に中国メーカー製品があふれかえり、中国語の看板が立ち並んだかといえば、そんなことは全くない。なぜなら、これらの投資は鉱山開発を始めとした第1次産業向けであり、インドネシアの輸出拡大に向けた投資がほとんどだからだ。一帯一路フォーラムに出席したジョコウィ大統領であるが、中国との関係は是々非々であると強調する。

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