「日本を裏切るなんて」 インドネシア初の高速鉄道開業でネットにあふれる軽薄な書き込み、建設支援は中国も、真の敵は“ヨーロッパ”である
信仰と政治の複雑性

いわく、インドネシアは中国依存から抜け出せないらしいが、たかだが総延長140kmの高速鉄道が中国の支援で建設されただけで、依存と断言するとは思慮のかけらもない。逆に、そのような印象操作でインドネシアは信用するに足らんと世論を扇動する本人こそが、中国の術中にはまっているといえるのではないだろうか。投資、協力先として不適合と、日本自らがインドネシアに烙印(らくいん)を押すことこそ、
「中国の思うつぼ」
である。
国際開発、国際協力の現場において、事前調査と本体着工が別の国になるということは、常に発生していることで、何らルール違反ではない。単に日本側が事前調査において、インドネシア側が納得する予算や工期を提案できなかっただけの話である。
当時の日本側とインドネシア側の生々しいやり取りが記録されているが、要するに、韓国、台湾での先行案件での失敗を全く生かせていなかったことに尽きる。そして、この日本の失注を、右翼論者は
「インドネシアの裏切り」
「中国と横取り」
と責任を転嫁して片付けようとしているのである。彼らは誤った歴史認識から、インドネシアは日本の従順な属国とでも考えているのか、だからこそ、
「逆ギレ」
しているのだろうが、思い上がりも甚だしい。
インドネシア建国の精神からして、インドネシアと中国は本来相いれない存在ともいえる。パンチャシラ(国是)において、唯一神へ信仰が定められており、無神論、つまり共産主義を認めていない。
とはいえ、初代大統領スカルノ時代末期には、かなり中国寄りの路線が採られたのも事実である。しかし、その反動として、1965年の9・30事件(左派軍人によるクーデター未遂事件)後の共産主義者狩りでは、数十万人が虐殺されている。これ以降、インドネシアは西側諸国の一員として数えられることになった。
余談ではあるが、かつて入国カードが存在した頃は、宗教記入欄に、決して無宗教と書いてはいけないとまことしやかにささやかれていた。このような背景、そして物理的に大陸とつながっていないこともあり、インドネシアは周辺諸国に比べて、中国、正しくは中国共産党の影響をあまり受けて来なかった。それだけの話なのに、多くの日本人は、インドネシアが親日国家であるとずっと
「勘違い」
してきたのである。