MaaSを始める自治体職員へ まず自分の街の“現実”を知ることから始めよう【連載】牧村和彦博士の移動×都市のDX最前線(2)

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新政権肝いりの「デジタル田園都市構想」では、地域再生の一つの柱として、またDX戦略の一つの柱としてMaaSが提案されている。MaaSが目的化することなく、持続可能な政策として定着していくために、どのような事に留意し進めていくべきか。

自分の街の移動サービスを正確に答えられますか?

金沢駅。金沢では自治体主導のMaaSサービスがスタートした(画像:TPG Images/123RF)。
金沢駅。金沢では自治体主導のMaaSサービスがスタートした(画像:TPG Images/123RF)。

「自分達が暮らしている街には、どのような移動サービスがありますか」。この質問に対し、自治体職員なら、鉄道、路面電車、路線バス、タクシーは即答できるだろう。それ以外にも、福祉輸送や自家用有償運送の送迎サービス、コミュニティバス、デマンドバス、スクールバス等が多くの地域で運行している。
 
 では、これらの移動サービスに公的な資金が毎年いくら充当されているか、答えられるだろうか。驚くことに、自分が所管している担当部署しか分からないケースが多いと聞く。

 上記以外にも、企業バス、商業施設や病院、観光施設や宿泊施設への送迎バス、カーシェアリングや自転車シェアリング、レンタカーやレンタサイクル、定期観光バスなど、地域の事情に応じた様々な移動サービスが存在する。

 モノの移動ではどうだろうか。郵便局の配送、宅配、生協、農協、移動販売、新聞配達など、様々な移動サービスが都市規模にかかわらずライフラインを支えている。

 もしあなたがMaaSを担当することに決まったら、まずは、自分の地域の移動サービスを掌握し、公的な負担の実態を理解し、それぞれの移動サービスが抱えている課題を知ることから始めることをお勧めしたい。地域全体での運転手の人数や年齢分布、それぞれの車両台数、移動サービスのエリアや路線、運行時間や運行頻度、運賃なども掌握しておきたい内容だ。いくつかの路線で朝や日中の1時間ほど通行する車両を観測するだけでも、普段自分が理解しているまちの実態や、その理解が深まるだろう。

 そのうえで、いまから5年後、10年後に自分の地域の移動サービスに何が起こりうるのか、想像力を働かせてほしい。その現実を多くの市民と共有していくことが大切であり、最優先に取り組むべきことの一つだろう。

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