トヨタ・出光「全固体電池」協業も、立ちはだかる“製造コスト”という動かざる山 リチウムイオン4~25倍の現実どう克服する

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トヨタと出光は、BEV用全固体電池の量産化に向けた協業の開始を発表した。両社以外にも全固体電池を開発する企業は多数存在するが、主導的ポジションを獲得できるのか。発表内容を深掘りする。

最も難しいのは製造コスト低減

トヨタ自動車の本社(画像:AFP=時事)
トヨタ自動車の本社(画像:AFP=時事)

 全固体電池の量産を想定する場合、安全性にも配慮しなければならない。液漏れや発火などのリスクがあり、水分や酸素を遮断した環境での製造が前提で、そうしたリスクを最小限に抑える製造現場を構築するノウハウの蓄積が必要だ。

 また、充放電サイクルで発生する亀裂による耐久性をクリアするという技術的な課題もあるが、トヨタの佐藤恒治社長は会見で「出光は早期から固体電解質の要素技術を開発しており、両社の技術融合により、耐久性を性能向上が見込まれる」と、今回の協業の意義を強調した。

 最も難しいのは製造コストだろう。現在、全固体電池の価格はリチウムイオン電池の4~25倍といわれており、大幅なコストダウンが必要だが、果たしてこの協業スキームでブレークスルーはできるのか。また、この協業が他社に拡大することも考えられる。

 全固体電池については、日産が2028年度までに、ホンダが2020年代後半までにBEVへの搭載を目指している。日産は7月、2024年までにパイロットライン(通常とは別に設けられる小規模なライン)を立ち上げる計画を発表し、10月26日から11月5日まで行われる「ジャパンモビリティショー2023」では、全固体電池を搭載した完全自動運転のミニバン「ハイパーツアラー」を出展する。

 この日産による全固体電池の開発に、トヨタはかなり焦っていると思われる。それが開幕前の協業発表につながったのだろう。世界に目を向けると、中国では比亜迪(BYD)や寧徳時代新能源科技(CATL)、欧州ではBMWやフォルクスワーゲン、ボッシュなどが全固体電池の研究開発に力を入れている。

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