トヨタ・出光「全固体電池」協業も、立ちはだかる“製造コスト”という動かざる山 リチウムイオン4~25倍の現実どう克服する

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トヨタと出光は、BEV用全固体電池の量産化に向けた協業の開始を発表した。両社以外にも全固体電池を開発する企業は多数存在するが、主導的ポジションを獲得できるのか。発表内容を深掘りする。

未知数の量産化スケジュール

出光の固体電解質小型実証設備(画像:トヨタ自動車)
出光の固体電解質小型実証設備(画像:トヨタ自動車)

 両社の共同研究は2013(平成25)年に始まり、2030年を目標とする量産までに約17年を要する大型プロジェクトだ。

 トヨタにとっては、BEV開発に注力するなかで、航続距離の延長、充電時間の短縮、高出力を実現するために全固体電池は不可欠である。EVシフトが遅れている同社にとって生命線となる技術だ。

 一方、出光にとっても、石油を中心とした化石燃料から高付加価値の化合物系エネルギーへのシフトは、両社にとってWin-Winの関係だ。ただし、今回の発表では今後のマイルストーンが明らかにされただけで、2030年までの7年間で量産化が実現できるかどうかは未知数という印象だ。

 プレスリリースで発表された両社の提携内容は以下のとおり。

・第1フェーズ:硫化物固体電解質の開発と量産化に向けた量産実証(パイロット)装置の準備
・第2フェーズ:量産実証装置を用いた量産化
・第3フェーズ:将来の本格量産の検討

マイルストーンは設定されたが、各段階の具体的な日程は示されておらず、これは逆に両社とも量産がまだ視野に入っていないことを証明しているようだ。

 第1フェーズが進むにつれて、少しでもスケジュールが見えてくることを期待したいが、そもそも両社はバッテリー専業メーカーではないため、全固体電池を量産するための無駄のないサプライチェーンを構築できるのか懐疑的でもある。この分野でトヨタグループ各社が参画するかどうかが注目される。

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