EV人気を手放しで喜べない、バッテリー「リサイクル」「リユース」問題という名の、根深いジレンマ
リユースのビジネス展開
一方、リユースはまだビジネスとして展開しやすく、実際、トヨタはJERA(東京都中央区)と共同で、EVやハイブリッド車(HEV)から回収した劣化の少ない使用済みバッテリーを使った産業用スイープ蓄電システムを商品化している。
同様に日産もダイヘン(大阪市淀川区)と共同で、EVやHEVから回収したバッテリーを使った産業用蓄電システムを商品化している。これらのシステムはすべて2022年末までに完成した。
EVの実用化で先行する日産は、こうした産業用蓄電池システムでのEVのリユースに加え、2023年9月にはフォーアールエナジー(神奈川県横浜市)、JVCケンウッド(同)と共同で一般家庭向けのポータブル蓄電池電源システムを発売した。商品名は「ポータブルバッテリー from LEAF」で、日産リーフのバッテリーを前面に押し出したリユースであることが特徴だ。
このポータブルバッテリーの容量は633Wh、AC出力は100V×2で最大600W(瞬間最大1200W対応)、USB出力、シガーソケット出力を備えている。2000回の充電が可能で、災害時の非常用電源として極めて高い性能を持つ注目の製品だ。EV用リチウムイオンバッテリーは非常に高品質な素材を使用しているため、廃車になってもバッテリー自体の劣化は少なく、リユースする際にも大きな問題はない。
ちなみに、ホンダは日本重化学工業(東京都中央区)と共同で、バッテリーの高度なリサイクルを可能にする手法を完成させている。そのほか、EVやHEVを手がける他の国内自動車メーカーも、車両から回収したバッテリーの取り扱いマニュアルを明確に定めている。
素材レベルでリサイクルするのか。それともリユースして魅力的な商品として提供するのか。考え方はさまざまだ。しかし、ビジネスとして利益を目指す日本での対策はともかく、EV用バッテリーの最大の生産国であり消費国である中国での状況は芳しくない。