大阪IR契約締結も、「夢洲アクセス路線」問題がさっぱり解決していない渋い現実
大阪市此花区の人工島・夢洲で整備予定の統合型リゾート施設(IR)が本契約に至った。開業時期の先送りが続き、夢洲アクセス路線の計画に影響を与えてきたが、まだ課題が残る。
遅れにつながる不安要素も
夢洲のIRは9月末、大阪府と米MGMリゾーツ・インターナショナル日本法人、オリックスを中核株主とする「大阪IR」が本契約に当たる実施協定を結んだ。液状化対策工事のあと、大阪IRは2025年春ごろから建設工事に入り、2030年秋ごろの開業を目指す。施設はカジノのほか、ホテル、国際会議場などで構成される。
万博前の開業を目標にスタートした事業だが、IR整備法成立や政府の計画認定の遅れにコロナ禍が加わり、開業時期がたびたび後ろ倒しされた。
その結果、近鉄は万博終了後、IR開業までの間の需要が見通せないとして直通運転開始時期を万博開幕からIR開業に切り替えている。大阪メトロもこの期間の運行に頭を痛めることになりそうだ。
しかも、実施協定では大阪IRが違約金なしに撤退できる解除権の期限を2026年9月まで3年延長した。吉村洋文大阪府知事は
「成功のために事業者とリスクを共有したい」
と述べたが、大阪IRの地盤整備などに対する不安が背景にあると見られる。
万博が海外パビリオン建設の遅れから、中止論や延期論が出ているのと同様に、IRも
・埋め立て地の地盤状況
・建設作業員の人手不足
・建設資材の高騰
など延期につながりかねない不安要素が残っている。またも延期となれば、鉄道会社に大ダメージとなる。
IRは関西経済の地盤沈下を食い止めるために計画されたが、夢洲はかつて、大阪五輪招致に失敗して
「負の遺産」
と呼ばれたいわくつきの場所だ。市民も鉄道会社も混乱続きの事業の行方を、固唾(かたず)を呑んで見守っている。