大阪IR契約締結も、「夢洲アクセス路線」問題がさっぱり解決していない渋い現実
大阪市此花区の人工島・夢洲で整備予定の統合型リゾート施設(IR)が本契約に至った。開業時期の先送りが続き、夢洲アクセス路線の計画に影響を与えてきたが、まだ課題が残る。
JR西の計画は先行き不透明
これに対し、計画の先行きを見通せない路線もある。夢洲と大阪市中心部を結ぶ北ルートは、JR西日本が大阪市此花区の桜島駅から舞洲を経由して夢洲へ路線を延伸する計画を持つが、動いていない。
理由のひとつが巨額の建設費だ。延伸距離は約6kmで、南ルートの約2倍。しかも、大阪港内を通過するため、桜島~舞洲、舞洲~夢洲間に2本の海底トンネルを通す必要がある。大阪府市が2014年に試算した費用は
「約1700億円」
で、南ルート約540億円の3倍以上だった。
夢洲が万博後にどのような街になるかは大阪府市で議論しているが、見通せる状況ではない。今のところ、居住人口を想定しない国際観光都市とする方向が有力だ。そうなれば通勤、通学という双方向の人の流れがなく、需要をIRに頼るしかない。
IR来場者は年間2000万人とされるが、日中関係の悪化など国際情勢が大きく変化するなかで期待通りの数を確保できるのか、疑問の声が出ている。JR西は
「さまざまな検討を進めているが、現時点で新しい動きはない」
と述べた。
京阪も同様
京阪ホールディングス(HD)は大阪市北区の中之島駅が終点の中之島線をIR開業時に大阪市西区の大阪メトロ九条駅まで延伸する計画を持ち、加藤好文会長をトップとする検討委員会で7月から延伸が可能かどうか検討している。
IR来場者らを中之島線経由で京阪本線へ誘導し、夢洲と京都市東山区の祇園四条駅を約1時間で結ぶのが狙いで、大阪都心を走りながら、赤字に苦しんできた中之島線の増収策とも位置づけている。
検討委員会はIR来場者を含めた需要や九条駅への接続方法などを精査しており、早ければ2023年度末までに結論を出したい考え。京阪HDは
「人の流れなどを予測し、地域社会に貢献できるかどうかをよく考えたい」
と話した。