燃料電池車は本当に日本で浸透するのか? デンマークでは「水素ステーション」がすでに閉鎖という、辛らつ現実
FCVの商用車導入に立ちふさがる課題

FCVは、燃料電池のなかで水素と酸素の化学反応によって発生する電気エネルギーを使ってモーターを駆動する。ガソリン内燃機関車がガソリンスタンドで燃料を補給するのと同じように、FCVも水素ステーションで水素を補給する。
そのため、
・長い航続距離
・多くの積載量を輸送
・短時間での燃料供給
といった理由から、トラック輸送に適していると考えられ、路線運行のFCVバス実証実験も進められている。
しかし、FCVの商用車導入には
・自動車メーカーは、FCVの需要が見込めなければ投資計画が立てられない
・運送会社や荷主は、FCVと水素ステーションがなければFCVの導入計画を立てられない
・インフラ事業者は、FCVの導入台数がわからなければ投資計画を立てられない
という、三すくみ状態の課題がある。
鶏が先か、卵が先かという問題に例えられるが、水素ステーションの整備が最優先される一方で、海外では水素ステーションの増設が失敗するという状況が生まれている。
環境先進国で水素ステーション閉鎖

デンマークで水素ステーションを運営するエバーフューエル社は、将来の事業見通しが立たず、3か所の水素ステーションの閉鎖を余儀なくされた。
同社は2023年末までに19か所の水素ステーション設置を目指していたが、デンマークで使用されているFCVはわずか
「136台」
であり、前述の三すくみに直面した。
負債総額は1100万ユーロ(約17億円)に上ったが、水素ステーションの建設費は従来のガソリンスタンドに比べて4倍も高く、投資コストの高い水素ステーション運営の難しさを露呈した。
トヨタ自動車はデンマークでタクシーやシェアリング向けにMIRAIを提供しているが、デンマークのFCV所有者はドイツなど隣国で水素を充填せざるを得ず、インフラ整備の重要性を再認識する出来事となった。
一方、水素利用を推進する欧州連合(EU)は、域内150kmごとに水素ステーションを設置することを目標としており、2030年までに667か所に設置する予定だ。