日産「欧州EV100%」戦略は成功するか? 命運は“EU次第”というジレンマ、急進シフト転換&内燃復興の流れで今後どうなる

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日産自動車は2030年までに欧州市場に投入する新型車をすべてEVにすると発表した。EUではこれまでの政策の見直しが始まっているなかで、新たなEV戦略を改めて打ち出した背景には何があるのか。

EU次第で変わる結末

EU本部(画像:写真AC)
EU本部(画像:写真AC)

 これらの経営判断について、

「欧州のEV重視戦略はいずれ失敗する」

という意見が少なからずあることは筆者(剱持貴裕、自動車ジャーナリスト)も承知している。現時点では、その方向にトレンドが傾いていることも事実である。

 しかし、激変する周辺情勢に右往左往していては、企業経営は成り立たない。なにより、50年という長期的視野に立てば、自動車の電動化の流れを阻止することは容易ではない。重要なのは、今後の動向がまったく読めない過渡期をどう乗り切るか、5年から10年のスパンで戦略を構築することだ。電動化を目指す日産の宣言は、あながち間違いではない。

 欧州、北米、南米、アジア、オセアニア、アフリカ、そして日本。それぞれの地域で状況は大きく異なる。グローバル企業として重要なのは、それぞれの販売地域の社会・経済情勢を十分に考慮した商品ラインアップと販売戦略をブレることなく構築することである。

 当面、主要販売地域であるEUの政策が大きく変わらなければ、2030年にEVに注力するという日産の欧州戦略は成功するだろう。問題はEUの政策が揺らいでいることだが、どうなるかは“EU次第”というのが痛しかゆしである。

 興味深いことに、EVが注視されている一方で、強力な内燃機関を搭載した車両も同じくらい注視されている。つまり、長期的には確実視されている電動化の道筋で、突然内燃機関への回帰が起こらないとも限らない。

 万が一そのような事態が発生した場合、魅力的な商品をいかに早く市場に投入できるか。日産に限らず、すべての自動車メーカーは難しい課題に直面している。
かじ取りを誤らない企業が最終的に勝つ。果たして日産は勝者の仲間入りができるのか。今後も注視していきたい。

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