日産「欧州EV100%」戦略は成功するか? 命運は“EU次第”というジレンマ、急進シフト転換&内燃復興の流れで今後どうなる

キーワード :
, ,
日産自動車は2030年までに欧州市場に投入する新型車をすべてEVにすると発表した。EUではこれまでの政策の見直しが始まっているなかで、新たなEV戦略を改めて打ち出した背景には何があるのか。

あえてEV逆風のなか進むワケ

日産自動車のウェブサイト(画像:日産自動車)
日産自動車のウェブサイト(画像:日産自動車)

 このような不安定な状況では、企業が方針を見直すのは当然である。折しも冒頭で述べたように、欧州では急速なEVシフトの修正が始まっている。日産はこれに乗じてEV戦略を縮小することもできたはずだ。

 しかし、日産はあえてそれをせず、目標期限を2026年から2030年に延長し、「新型車はすべてEVに」と、これまで以上に積極的なEV戦略を発表した。これは将来を見据えた大きな決断だった。決意というべき方向性を改めて明確にしたことは評価できる。

 戦略のこの部分をより詳しく解説する。これまで設定されてきた2026年という期限を前提にすれば、販売シェアを拡大するための主武器となるべきEVは、既存モデルとその改良型にならざるを得ない。現在開発中の新型車があったとしても、残り3年という期限は

・量産体制
・販売戦略

を確立するにはギリギリの時間である。

 一方、現在のシェア2%を大きく伸ばすには、市場競争力で圧倒的な訴求力を持つ新型EVが必要なのは自明の理だ。つまり、既存のモデルだけではもはや十分ではない。しかし、2030年まで延長すれば、まったく新しい次世代EVの開発・投入が可能になる。

 EVの技術革新のスピードや、その一部である自動運転技術を考えると、1年後にどうなっているかを予測するのは難しい。魅力的な新技術を搭載した新型EVが日産の起死回生の武器になるだろう。日産が新型車をすべてEVにすると発表した背景には、このような事情があると推察される。

全てのコメントを見る