日産「欧州EV100%」戦略は成功するか? 命運は“EU次第”というジレンマ、急進シフト転換&内燃復興の流れで今後どうなる

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日産自動車は2030年までに欧州市場に投入する新型車をすべてEVにすると発表した。EUではこれまでの政策の見直しが始まっているなかで、新たなEV戦略を改めて打ち出した背景には何があるのか。

欧州市場で低い知名度

日産自動車のロゴマーク(画像:EPA=時事)
日産自動車のロゴマーク(画像:EPA=時事)

 2023年9月25日、日産自動車は2030年までに欧州市場に投入する新型車をすべて電気自動車(EV)にすると発表した。

 近年の欧州市場の急速なEVシフトを考えれば、ある意味当然の判断である。しかしその一方で、欧州連合(EU)では、これまでの急進的なEVシフト戦略が通用しないとして、自国の立場を含めた政策の見直しが始まっている。そんな先行きが不透明ななかで、日産があえて新たなEV戦略を改めて打ち出した背景には何があるのか。

 まず、現時点での事実関係を明らかにしておこう。日産はこれまで、2026年までに欧州市場でEVとハイブリッド車(HV)を合わせた電動車の販売比率を98%にする目標を掲げ、そのなかでEVの比率は78%としてきた。これは、同社の電動化へのコミットメントを明確に宣言したものとして意義深い。しかし同時に、日産には大きな問題があった。欧州市場の業績が芳しくないのだ。

 実際、欧州市場における日産のシェアは現在2%程度である。この市場における電動車の比率は現在50%。しかも、50%のうちEVが占める割合は16%といわれている。販売台数の半分が電動車というのは、それほど悪いことではない。しかし、日産の企業規模を考えると、シェア2%というのはあまり心もとない。

 当初の目標期限まで残り3年あまり。この期間内に、現在の50%を98%に、16%を78%に引き上げることが本当に可能なのだろうか。問題はまさにここにある。

 現在、日産の世界生産台数に占める電動車の割合は約10%である。日産のEVは日本ではよく知られ、信頼されている。しかし、欧州市場では日産のEVは数が少ないこともあり、存在感も知名度もない。

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