河野デジタル大臣が「ライドシェア導入」の旗を必死に振り続けるワケ【連載】方法としてのアジアンモビリティ(7)
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急速に変化・成長する経済圏として、世界的に注目されているアジア。この地域発のモビリティ・アプローチが、今後の経済において重要な役割を果たすことはいうまでもない。本連載では、アジアにおけるモビリティに焦点を当て、その隆盛に迫る。
5年後に約30兆円市場
9月22日に行われた河野太郎デジタル大臣の記者会見が波紋を広げている。ここで河野氏は、ライドシェア解禁に向けた議論に着手する方針を表明したのだ。
ライドシェアとは、個人のドライバーが自家用車を使って乗客を運ぶサービスで、利用者はスマートフォンの専用アプリで近くのドライバーを探すことができる。すでに、米国のUber(ウーバー)やLyft(リフト)が各国で事業を拡大、ライドシェア市場は急速に拡大している。
調査会社フォーチュン・ビジネス・インサイツのリポートによると、世界のライドシェア市場規模は、2020年に764.8億ドル(約9兆円)に達しており、2028年には
「2427.3億ドル(約30兆円)」
に拡大すると予測されている。
さて、河野大臣の発言に反応したのが、斉藤鉄夫国土交通大臣だ。9月26日の会見で、
「安全、安心を大前提に、需要に応えられるようタクシーなどへの支援や規制緩和に取り組みたい」
と述べ、ライドシェア導入に慎重な姿勢を示した。
河野大臣の発言に先立ち、9月8日には、松野博一官房長官が、ライドシェアの解禁について、運行管理や車両整備の責任が不明確であることを挙げて、
「安全の確保、利用者の保護などの観点からさまざまな課題がある」
と指摘していた。
このように慎重論が根強いなかで、なぜ河野大臣はこのタイミングでライドシェア導入論を打ち上げたのだろうか。