古い軍用機の「修復ビジネス」が日本で存在しないワケ

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日本で保存・展示されている航空機のなかには、エンジンそのものの状態は悪くなさそうな機体もある。とすれば、これらの機体を日本で整備し、始動可能な状態にしておけば、新たな航空関連ビジネスの可能性があるかもしれない。

英国空軍博物館の過去の事例

プレーンズ・オブ・フェイムで保管展示されているロケット戦闘機秋水。現存しているオリジナルはこの1機のみの試作機。本格的な修復は行われていない(画像:守山進)
プレーンズ・オブ・フェイムで保管展示されているロケット戦闘機秋水。現存しているオリジナルはこの1機のみの試作機。本格的な修復は行われていない(画像:守山進)

 ここまでで、古い航空機、特に日本機を日本で飛行可能な状態に修復するハードルの高さがわかってもらえたと思う。では、現状維持で行くしかないのだろうか。

 ここで参考になるのが、英国空軍博物館の過去の事例である。それは、エンジンのみを始動可能な状態に修復するというやり方である。

 実際、英国空軍博物館が所蔵する2機の日本機、陸軍五式戦闘機と陸軍百式司令部偵察機は、いずれも飛べないが最終的には始動可能な状態で修復された。航空機は完全な静態保存では不十分である。たとえ飛べなくても、エンジンが始動できるというだけで価値が高まる。この感覚は、読者にも理解してもらえるだろう。

 エンジンの修復は、機体全体を修復するよりもはるかに安い。米国には、今でもそうした修復をビジネスとして行っている会社がいくつかある。エンジンに関しては、欧米製と日本製で構造的に決定的な違いはなく、既存の技術ノウハウが使える。

 筆者は以前、米国の航空機エンジン修復業者を訪問した際、修復のために分解点検中の二式1150馬力発動機を見た。陸軍では、このエンジンは一式戦闘機隼二型および三型に搭載されていた。海軍では、零式艦上戦闘機三二型以降などに装備された栄二一型と同じものである。

 検討の結果、内部で腐食した2本のシリンダー、失われていた排気管関係、劣化した電装系などを新造すれば、始動可能な状態に修復することは難しくないということだった。それを踏まえて、

「こうした作業であれば、過去に星型エンジンを整備した経験がある日本の企業でもできるのではないか」

というのが筆者の率直な感想だった。

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