古い軍用機の「修復ビジネス」が日本で存在しないワケ

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日本で保存・展示されている航空機のなかには、エンジンそのものの状態は悪くなさそうな機体もある。とすれば、これらの機体を日本で整備し、始動可能な状態にしておけば、新たな航空関連ビジネスの可能性があるかもしれない。

予算不足に悩まされる各国

米国空軍博物館で修復されていた海軍局地戦闘機紫電改。この機体は既に修復が完了し展示されている。修復は飛行可能なレベルでの作業が行われた(画像:守山進)
米国空軍博物館で修復されていた海軍局地戦闘機紫電改。この機体は既に修復が完了し展示されている。修復は飛行可能なレベルでの作業が行われた(画像:守山進)

「3」について。欧米も日本も常に予算不足に悩まされている。公的機関であるスミソニアン協会や米国空軍博物館による修復は、非常にゆっくりとしたペースである。完成度は一般的に10年に1機未満。これは、予算調達が厳しいためだといわれている。

 これに対して、民間の非営利財団として維持されている航空博物館か、民間業者に発注している修復事業は、はるかにスピードが速い。これは、博物館の所有者や支援者に富裕層が多いことと無関係ではない。要するに、スポンサーがしっかりしているのだ。

 欧米では、公的博物館における修復の第一の目的は、航空機を将来にわたって安定的に保存することであり、必ずしも飛行させることを前提としていない。対照的に、民間の博物館では、可能であれば飛行可能な状態に機体を修復することが多い。ただし、スミソニアンなどでは、「飛行させることはあり得ないが、必要とあらば飛行も可能なレベル」というレベルで修復作業が行われていることが知られている。

 予算に関しては、日本は欧米以上に悲観的にならざるを得ない。近年、国立科学博物館は航空機関連の収蔵物を民間との委託提携により「科博廣澤航空博物館」として保管することを選択した。これも基本的には博物館自体の予算不足が原因である。国立科学博物館が運営資金不足を理由にクラウドファンディングを開始したことがニュースになった。それだけ逼迫した状況であり、日本の中央政府もこの分野への理解が乏しい。

 では、航空機の修復に必要な予算はいったいどれくらいなのか。これについては

・機体の劣化度
・工作工程の多寡
・工作の難易度

など、不確定要素が多すぎるため不明だ。しかし、民間における航空機の販売価格からある程度推定することはできる。

 筆者(守山進、フリーライター)が過去に修復中の実機を見たグラマンF8Fベアキャットの場合、機体の状態は悪くなかった。とはいえ、外板の多くは交換され、エンジンとその補機類はほぼ新品だった。この機体は後に350万ドルで売却された。このことから、修復費用は少なくとも100万ドルはかかったと推測できる。

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