古い軍用機の「修復ビジネス」が日本で存在しないワケ

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日本で保存・展示されている航空機のなかには、エンジンそのものの状態は悪くなさそうな機体もある。とすれば、これらの機体を日本で整備し、始動可能な状態にしておけば、新たな航空関連ビジネスの可能性があるかもしれない。

米国の現状

英国空軍博物館で保管展示されている陸軍五式戦闘機。エンジンはオリジナルのハ112II。最近は始動させることはめったにないが、修復完成時にはエンジンを始動させた写真が公開されている(画像:守山進)
英国空軍博物館で保管展示されている陸軍五式戦闘機。エンジンはオリジナルのハ112II。最近は始動させることはめったにないが、修復完成時にはエンジンを始動させた写真が公開されている(画像:守山進)

「2」については、米国にはどんな古い機体でも飛行可能な状態に完全に修復できる専門業者がいくつかある。また、スミソニアン協会や米国空軍博物館などの公的施設に併設されている修復工房も高い技術を持っている。

 英国空軍博物館や王立戦争博物館付属の修復工房も同様だ。彼らは修復に必要な秘技に関する情報も豊富だ。

 一方、日本の状況を見ると技術的には十分なようだ。第2次世界大戦当時に航空機を生産していた企業のうち、

・三菱重工業(三菱航空機)
・SUBARU(中島飛行機)
・川崎重工業(川崎航空機)
・新明和工業(川西航空機)

は現在も航空機やヘリコプターを生産している。

 特に三菱に関しては、過去に海軍の零式艦上戦闘機や局地戦闘機「秋水」を、静態ながら修復(ほぼ新造)した実績がある。

 SUBARUは、米国から持ち込まれた飛行可能な陸軍四式戦闘機「疾風」を一時保管していた。保管中はエンジン始動が不可能にならないよう、社内の有志スタッフによって整備・保守が行われた。技術力という点では、いずれの会社にも全く問題はない。問題は、現状では収益事業として成立していないという事実にある。

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