管制官は「ステルス機」をどうやって見つけるのか? 米国「F-35B」機体行方不明トラブルから考える

キーワード :
,
9月17日午後、サウスカロライナ州チャールストン国際空港付近で、米海兵隊のF-35Bからパイロットが非常脱出した。いったい何があったのか。

管制レーダーに映らなかった理由

F-35Bのレーダーリフレクター(画像:フニーニ)
F-35Bのレーダーリフレクター(画像:フニーニ)

 F-35Bの行方がわからなくなったことで、ちまたでは

「さすがステルス機だな」

とやゆする声も上がったが、実戦で作戦行動中ならともかく、平時に戦闘機が行方不明になっていいはずはない。しかし、レーダーに映らないはずのステルス機を、地上の管制機関はどうやって管制しているのだろうか。

 実は、ステルス機も平時は通常の航空機と同じようにレーダーに映る仕掛けを持っている。それが

「レーダーリフレクター」(レーダー反射器)

という装置である。

 F-35の場合、平時は機体の上面と下面に左右2か所、合計4か所にレーダーリフレクターを取り付けている。機体の性能を阻害しないようコンパクトな大きさだが、なかにはレーダーからの電波を電波到来方向へ正確に反射する

「ルーネベルク・レンズ」

というデバイスが内蔵されており、普通の飛行機と同等の反射波をレーダーに返すことができる。レーダーリフレクターは取り外しが可能なので、実戦出動や、それに準じた訓練など、必要な場合は取り外すことで本来のステルス性を取り戻せる。

 今回の事故機もレーダーリフレクターを装備していたはずだが、最寄りにあったチャールストン国際空港の管制塔は、それでも同機を見失った。その際の無線交信を録音していた市民がネットで音声を公開しており、以下はいずれもチャールストン管制塔の発信である。

「We’ve lost … our primary target on him. (彼(事故機)の1次レーダー航跡を見失った)」
「SWEDE 12, Roger. As for now, we’ll consider your wingman NORDO.(SWEDE 12へ、了解、現在貴機の僚機は通信不能と思われる)」

全てのコメントを見る