JR東日本が強力ライバルであるはずの「航空会社」とタッグを組む切実事情
現実的パートナーは航空会社
しかし、JR各社の前身である国鉄時代は全国1社体制だった。もし、JR東日本とJR東海が資本関係を持つ関係会社同士だったら、JR東日本管内の駅に、京都や大阪などの観光ポスターが掲示されていたかもしれない。
JR東日本が自社管内への誘客を重視して、航空会社と手を組み、結果として自社管内への誘致に成功し、JR東日本としての収入は増えたとしても、片道は航空便に流れてしまえば、JRグループ(鉄道)としての収入は減ってしまうことになる。
他方、JR北海道・JR四国・JR九州にとって、航空会社は「補完関係」にある。これら3社にとって、日本の人口の約3割に相当する約3600万人が住む1都3県から自社管内への誘客を図ることは最重要施策のひとつといえる。
現実に、
・東京~福岡 → JR11:89航空(『JR東海ファクトシート2022』)
・1都3県~道央(札幌など) → JR0.8:99.2航空(『旅客地域流動調査2021年度』)
・1都3県~香川(高松など) → JR23:77航空(同)
のシェアとなっていることから、現実的なパートナーは航空会社である。JR北海道・JR四国・JR九州は航空便利用者向けのフリーきっぷを発売するなど、航空便を降りた後に、JRを利用してもらう作戦をとっている。
なお、JR九州では事情の変化も発生した。九州新幹線全通後、近畿圏などからの誘客を図る有力なツールとして新幹線の利用促進に力を入れるようになったのである。
京阪神~熊本間では、2011(平成23)年度は対航空のJRのシェアは約37%だったのが、2019年度は
「約59%」
へと上昇した(『JR西日本ファクトシート2022』)。
JR九州は主要区間のひとつである小倉~博多間で、JR西日本山陽新幹線への対抗策として、特急や快速の本数確保や割安な企画きっぷ発売を実施。対するJR西日本も朝夕に小倉~博多間の1区間のみの新幹線を運行するなど部分的な競合はあるものの、JR西日本とJR九州は、近畿圏~九州新幹線沿線の間で航空便と対峙するうえで、新幹線の利用促進を図る同盟・補完関係へ変化した。