JR東日本が強力ライバルであるはずの「航空会社」とタッグを組む切実事情

キーワード :
, , , ,
東京~秋田間などで、新幹線と航空会社は競合する。それでもJR東日本はANAと手を組む選択に踏み切った。いったいなぜか。

求められる観光輸送需要

JR東日本のウェブサイト(画像:JR東日本)
JR東日本のウェブサイト(画像:JR東日本)

 JR東日本では、関東圏の在来線の輸送量は全体の約80%を占めるが、鉄道運輸収入全体に占める割合は

「約67%」

に下がる(JR東日本『2023年3月期 決算説明会』)。客単価の比較的小さい通勤・通学輸送が多いことが、収入割合の低下につながっているものの、同社にとって関東圏の在来線の輸送は重要な稼ぎ頭であることは間違いない。

 ただ今後は、人口減少にともない、通勤・通学輸送の減少は避けられず、客単価を上げる必要がある。特急料金収入と長距離の運賃収入を見込める観光輸送の割合を高めて客単価を上げたいところだが、国内には多様な観光地が点在する。

 例えば、JR東日本管内の青森県の観光客数は約2283万人であるが、観光客の出発地割合は

・関東(東京除く):10.9%
・東京:7.9%

にとどまる(『青森県観光入込客統計2021年(令和3年)』)。

 JR東日本管内ではない京都市の観光客数は約4361万人で、観光客の出発地割合では関東は30.2%(内、東京12.3%)であった(京都市産業観光局『観光客の動向等に係る調査 令和4(2022)年1月~12月』)。

 客数は年の違いがありコロナの影響もあるため単純な比較は難しいものの、注目すべきなのは関東地方からの入込客数の割合に、10ポイント以上の差がある点だ。JR東日本としては、自社管内在住者には自社管内の観光地を選んでほしいところだが、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(大阪市)などを擁する京阪神地域が立ちはだかる。

 オンライン旅行ガイドブック『トリップノート2022年版』では、上位10位のうち、京都・大阪の観光地が6か所を占め(ほか、東京3か所、北海道1か所)、東北地方の観光地は1か所もライクインしていない。20位に、ようやく北陸新幹線の利用促進につながる可能性のある、兼六園(石川県金沢市)が入る。

全てのコメントを見る