自社の社員を社外で「さん付け」紹介、アリ?ナシ? 人事コンサルの私が感じた違和感の正体
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外資系企業やベンチャー企業の間で「さん付け文化」が広まっている。顧客の前でも「うちの〇〇さんが」といったイメージだ。肯定的に捉えていいのか。
尊敬より親しさ
こういった敬語の変化を踏まえて、なぜ以前から、社外では「呼び捨て」が常識であったのかを改めて確認したい。
「ウチ」である同じ会社の上司と部下との距離は、「ソト」の人である顧客との距離よりは当然近い。そのため、「ソト」の人に「ウチ」の人を表現する際、その心理的距離が近いことを示すために「呼び捨て」にする。
「敬」語といっても、昔のような身分を確認する目的ではない。「呼び捨て」はむしろ上司と部下の近さを表現している。呼び捨てにするときに「下に見る」意図などはないのだ。
大昔は家内でも父や祖父には敬語を使ったのが、近年は親子間での敬語がなくなっていったのと同じだ。
社内関係の希薄化
素朴に考えれば、「社外でも『さん付け』」運動は、個を重視して、「ウチ」も「ソト」も問わずに、等しく敬意を払うことの表れと考えられる。実際、そういうつもりで使っている人も多いであろう。
しかし、もし、前述の「親疎」説が正しければ、近年の「社外でも『さん付け』」という動きの意味が変わって見える。本当なら社内の人は社外の人よりも心理的距離が近くて当然なはずのに、
「社外の人と同じくらい心理的距離がある」
という意味にも考えることができる。
「敬して遠ざける」(うわべは尊敬するが、内実は疎んじること)
という言葉があるように、「さん付け = 尊敬」ということではない。