新幹線建設と並行在来線「切り捨て」問題 背後に隠された複雑な政治的駆け引きとは?

キーワード :
, , ,
北海道新幹線の札幌延伸が進むなか、並行在来線の行方が問題になっている。一度はバス転換が決まった長万部~小樽間だが、本当に対応できるのかという疑問の声が上がっており、一度は決まった廃止計画自体を見直すべきだという意見も出ている。

JRの負担増を画策する財務省

北海道新幹線のルート(画像:札幌市)
北海道新幹線のルート(画像:札幌市)

 まず、線路を含む新幹線施設は鉄道建設・運輸施設整備支援機構(神奈川県横浜市)に属している。JR各社はこれらの施設を借り受け、新幹線を運行している(上下分離方式)。

 整備の財源は、JRが支払う貸付料の残りの3分の2を国が、残りの3分の1を地方自治体が負担する。貸付料は、開業前の利益予測に基づき、開業後30年間にわたってJRが分割して支払う。

 しかし近年、財務省は建設費の高騰を理由にJRの負担増を画策しており、これも新たな火種となっている。この複雑なスキームが形成される過程で、新幹線の条件として、並行在来線は、沿線自治体が引き取る流れが生まれたのである。

 北海道、東北、北陸、九州(鹿児島ルート、西九州ルート)の整備新幹線5路線の整備計画が策定されたのは1973(昭和48)年のことだった。しかし、国鉄の巨額債務などの問題解決を優先した結果、1982年9月に整備計画の一時凍結が決定された。並行在来線の廃止は、工事の再開が模索される中で、生まれたものであった。

 1984年12月、二階堂進自民党副総裁(当時)、金丸信幹事長らは、東北新幹線の盛岡~青森間、北陸新幹線、九州新幹線鹿児島ルートの建設費を予算案に復活させる新たな前提条件を提示している。ここで示されたのが

「競合する在来線を廃止する」

という条件案であった。当時、大蔵省と国鉄再建監理委員会は財政難を理由に整備新幹線の着工をかたくなに拒んでいた。そこでひねり出されたのが、赤字が予想される在来線を廃止するというものだった。

全てのコメントを見る