京都は「観光公害」を乗り越えられるか? 海外ではもはや“侵略”扱い、日本でも「流入抑制」が必要だ

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コロナ感染拡大前の2019年の訪日外客数は、2010年代初頭と比較して4倍近い規模にまで拡大している。そのため、すでに大型観光地ではその弊害が見られている。オーバーツーリズム(観光公害)である。

オーバーツーリズムは「国の重要課題」

京都の観光名所(画像:写真AC)
京都の観光名所(画像:写真AC)

 オーバーツーリズムは観光による

・ポジティブな影響
・ネガティブな影響

のバランスによって問題化するもので、観光の受益を住民が望んでいる場合は大きく問題化しない。

 観光が基幹産業である地元ではインバウンドを希求する声は大きい。観光客が増えることによるマナー違反はインバウンドに限ったことではなく、過去にも見られた。しかし、

「限度を超えた観光客の流入」

によって住民の生活が脅かされるレベルになると、問題は深刻化する。

 観光庁では2018年に「持続可能な観光推進本部」を設立し、対応を検討・推進している。もっとも、コロナ前はインバウンドの急増による経済効果への熱い期待にかき消され、あまり表だってオーバーツーリズムは言われてこなかった感がある。コロナ禍になり、改めて冷静に考えられるようになったのだろう。

 国は3月31日に新たな「観光立国推進基本計画」で「量より質」を重視する新たな方針案を示し、8月26日には岸田総理がオーバーツーリズムを国の重要課題と認識、対策をとりまとめると表明した。

 現在、国内では観光客を抑制するような施策ではなく、観光客の分散をはかり、ルール・マナーを啓発する施策が推進されている。京都の「嵐山快適観光ナビ」では、スマートフォンなどのWi-Fiアクセスデータを活用して観光客の入込状況を把握、快適に観光できる場所や時間帯をウェブサイト上で可視化し、おすすめ観光ルート情報などの提供で周辺エリアへの回遊を促す取り組みを行い、観光客の分散化・混雑緩和に一定の成果は得ている。

 さらに9月11日、京都市では

・観光地への臨時バスの増便
・観光客が少ない朝・夜の時間帯のイベント紹介

など混雑防止のためのパンフレット、多言語によるルール・マナー啓発のデジタルサイネージの設置などの対策を打ち出した。

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