崩壊する中国新車販売市場 日産・ホンダ8月「約3割減」の衝撃、日本が今後ウォッチすべきは韓国企業の動向だ

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経済や貿易の領域が主戦場となる米中対立、有事の潜在的リスクが残る台湾情勢などを考慮すれば、中国に進出する全ての日本企業にとって、今後経営戦略を考える上で地政学リスクが占めるシェアというものはいっそう広がることだろう。

地政学リスクを重視する韓国企業

日本、韓国、中国(画像:写真AC)
日本、韓国、中国(画像:写真AC)

 筆者(和田大樹、外交・安全保障研究者)は地政学リスクの観点から日々海外に進出する日本企業にアドバイス、コンサルティングを行っているが、最近世界各地に展開する韓国企業の担当者らと相次いで会合を持った。

 そこで頻繁に話題になったのが脱中国依存で、韓国企業は極めて地政学リスクを重視し、それに基づいて経営戦略を練っている印象を強く受けた。もちろん全ての韓国企業が当てはまるわけではないが、アフターバイデンの米国の対中戦略、共和党民主党双方での対中認識、2024年秋の米大統領選、2024年1月の台湾総統選挙が与える中台関係への影響などを戦略的に考え、そういった政治動向がどのように経済や貿易の領域に影響を与えるか、それを経営戦略の核心に置いている企業も見られた。

 また、今日の韓国ユン政権が日米との関係を第一に、日米豪印によるクアッドなど自由や法の支配など普遍的な価値観重視の外交を展開する一方、中国との貿易関係が冷え込む可能性に基づき、今後の中国ビジネスを考えている企業や、韓国では大統領任期が一期5年であることから、政権交代ごとに周辺国との外交関係、それによる韓国を取り巻く地政学リスクを考えなければならないと翻弄(ほんろう)される企業の声も聞かれた。

 しかし、全体として感じたのは、韓国では依然として徴兵制が徹底され、北朝鮮という安全保障上の脅威が目の前にあることもあり、企業の間で地政学リスクへの意識が日本より強いということだ。これはどの分野にもいえることだが、やはり日頃から強い意識や関心があれば、それへの対策は早く施され、徹底される可能性が高まる。

 以前、韓国の安全保障研究者と会談したときも、

「韓国では安全保障や地政学リスクに対する市民の意識は日本より強く(最近は平和ボケしている若い世代が増えているが)、2年の徴兵を経験した人々が企業に入って経営層になっていくので、企業の地政学リスクへの関心は自然に強くなる」

といっていたのを思い出す。

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